つたえ隊Vol.21 ナゴアス カポエイラ静岡 松永Feijao哲也さん

 

松永Feijao哲也さん

教室の先生や

教室に関わる人物を紹介する

「つたえ隊」。

 

第21回目は、

ナゴアス カポエイラ静岡

松永Feijao哲也さん。

ブラジル生まれの「カポエイラ」は、音楽に合わせてリズミカルに、踊るように相手と技を競う。

アクロバティックな動きや、それを囲む場の雰囲気に魅かれてカポエイラを始めた松永さんは、技術だけではなく「ブラジルの文化や歴史なども含めてカポエイラを伝えたい」と思いを語る

 

 

カポエイラの魅力、そしてならいごととの関わりについて聞いた。

 

過去が今につながっている

 

「強い」にあこがれた少年時代

小学校低学年ぐらいの頃、漠然と「強い」ことに憧れて空手道場に見学に行ったことがあります。でも、結局僕自身弱虫だったので入会はせずじまい(笑)。

実家が静岡の奥の方なので、山の中を駆け回って育ちました。高校ではチェス部に入って、相手の心理を読むというようなことをやっていましたね。山で遊んでいたことも、チェスで頭を使って相手の何手も先を読むことも、もしかしたら、このカポエイラにつながっているのかもしれない…と、こじつけかもしれませんが、今になって思います。

今も茶畑で作業することがありますが、斜面での作業はバランス感覚が養われたり足腰が鍛えられますし、カポエイラも相手の動きを予測するような「読み」が必要になってくる。不思議なことですが、42歳になった今もカポエイラを続けられるのは、これまで自然と培った体力や考え方のおかげなのかもしれません。

 

 

 

笑顔と熱気にひきこまれた

 

カポエイラの魅力は笑顔と熱気!

カポエイラと出逢ったのは、アメリカに住む友人を訪ねた時。たまたま友人に紹介されて、初めてライブで練習やホーダ(円陣の中でカポエイラをすること)を見たんです。ブラジルのスポーツなので、アクロバティックな動きの中にも遊びがあり、そのやりとりや楽器のリズム、場の雰囲気や熱気、やっている人たちの笑顔に「これは何かあるんじゃないか」と。直感でひきこまれたのを覚えています。

日本に帰ってからとにかく、カポエイラを自分でやってみたいという気持ちが募っていったこと、かねてから地元で何かを伝えるようになりたいと思っていたことがあり、カポエイラを始めました。もともと南米の陽気な感じのサッカーが大好きですし、格闘技も音楽も好きでした。みんなが笑顔でカポエイラをやっていたのを思うと、もしかしたら、ストレス低減や健康維持、親子のコミュニケーションの促進みたいな効果を伴いつつ、人を魅了できる形で何かを伝えられるんじゃないかと思ったのがきっかけでした。同時に、自分自身もそういうものを求めていたからかもしれません。

 

 

 

文化を広める視点

 

指導者として伝えるべきこと

当時、東京にはいくつか教室がありましたが、静岡にはなく、ようやく見つけたのが浜松のジョージ・ペレーラ・八木先生が開いている道場。4年ぐらい、週2、3回浜松まで通いましたね。

生徒のほとんどはブラジル人でしたが、なんとか彼らとコミュニケーションを取りたいというモチベーションと、上達したいという気持ちだけで、がむしゃらに頑張りました。限られた時間の中でどれだけ吸収できるか、それだけを考えていましたね。そのうち先生が静岡のカルチャーセンターで教えるようになり、僕に指導者のバトンが回ってきました。そこで初めて自分だけではなく他の人のことも考えなければならなくなったんです。楽しませながら、飽きないよう、その人が目標を見つけられるように誘導することが求められる立場です。そしてグループとして大きくなるには、メンバーを増やさなければならない。

技術だけではなく、もっと広く「文化」を広める視点が必要だと気づきました。

 

 

子どもの頃はそこまで深く考えていませんでしたが、続けるほどにその理念に共感しますし、だからもっと続けたくなるし、伝えたくなる。子ども相手でも同じです。

 

 

輪の中では同じ

 

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カポエイラは一説で昔、アフリカから奴隷として連れて来られた人たちがうみ出したとされています。歴史はサッカーより古く、400年ぐらいあるとか。

差別や武道禁止といったハードルを乗り越えて、今では立派なスポーツとして人々に受け入れられています。ですから、カポエイラをやっていくには、動きや技だけでなく、楽器、歌、ポルトガル語、ブラジルの歴史、アフリカの歴史、突き詰めればそういうところまで理解して伝えていかなければ、と思っています。

そういう背景があるからこそ、肌の色や年齢、性別の違いがあっても、輪の中では対等、体を使って会話ができる、というカポエイラの魅力が成り立っているんだと僕は思います。

相手をノックアウトしたり痛めつける格闘技ではなく、相手を思いやりながら互いに引き出していくスポーツなので、子どもの頃からやっていれば、将来的にコミュニケーションが上手になることも期待できるかもしれません。