つたえ隊Vol.20 金剛禅総本山少林寺 浜松渡瀬道院(少林寺拳法) 浅井昌典さん

 

つたえ隊Vol.20 金剛禅総本山少林寺 浜松渡瀬道院(少林寺拳法) 浅井昌典さん

教室の先生や

教室に関わる人物を紹介する

「つたえ隊」。

 

第20回目は、少林寺拳法

金剛禅総本山少林寺 浜松渡瀬道院(少林寺拳法)

浅井昌典さん。

少林寺拳法は、実は日本発祥の武道。戦後の荒れ果てた日本で、身心ともに豊かな人を育てることを目的に創設された。

浅井さんも「みんなで分かち合ってみんなで強くなろうとする雰囲気」に魅了された一人。

子どもたちを見守るまなざしの中に、厳しさ、人としての優しさ、芯の強さがうかがえる。

 

 

少林寺拳法、そしてならいごととの関わりについて聞いた。

 

道場が好きな子ども時代

 

道場が好きな子ども時代

少林寺拳法との出合いは小学2年生のとき。友達が習っているのを見て、自分もやりたいと思ったのがきっかけです。これが、自分の意志で「やりたい」と実行に移した初めてのこと。ですからもう40年以上続けていることになりますね。

 

当時は「ブルース・リー」ブームもあって、子どもだけで100人以上、大人もたくさん通っていました。ただ、僕は真面目に練習するよりは、道場という場所が好きで通っていた子どもでした。中1の春に初段を取ってから28歳まで初段のままだったぐらいですから。「学校とは違う道場の空間」が単純に好きで楽しくて。それが自分にとっての少林寺拳法の原点です。

 

 

指導者としての心構え

 

指導者としての心構え

高校卒業後、自衛隊に入隊し、千葉の木更津に配属になりました。木更津にも少林寺拳法の自衛隊支部というのがありまして、そこでも続けていたんですが、浜松に転勤になったのを機にもとの道場に戻りました。真剣に少林寺拳法に取り組み始めたのはそれからです。
そのうち、30歳を過ぎた頃に恩師が倒れ、代わりに子どもたちを教え始めて、「浜松渡瀬道院」として独立することになるんですが、その立場になってから、教えることの難しさ、責任をあらためて感じました。

 

僕は他の仕事をしながらこの道場で教えていますが、時間には絶対に遅れないように心がけていますし、仕事で疲れたり体の調子がいまいちでも、決して表には出さないようにしています。そして、たとえ相手が幼稚園児でも、一人の人間としてきちんと話を聞く。これは少林寺拳法の教えと通じるものがあるんです。

 

 

 

勝ち負けはない

 

勝ち負けはない

少林寺拳法が、柔道や剣道など他の武道と大きく違うのは「勝ち負けを競わない」ところ。
僕は中学・高校時代は剣道もやっていたんですが、勝つことが目的になるということは「限界を感じる」ことなんですね。
センスや運動神経、体格など、この人には勝てるけど、この人には勝てない、という差がおのずと突きつけられてしまう。
でも少林寺拳法はそれがありません。

「自己確立」「自他共楽」という理念は、自分が上達するには相手も尊重する、ということを表しています。そんな教えが、技を習得する中で自然と身についてくるんです。

 

 

子どもの頃はそこまで深く考えていませんでしたが、続けるほどにその理念に共感しますし、だからもっと続けたくなるし、伝えたくなる。子ども相手でも同じです。

 

 

失敗してもいい

 

失敗してもいい

お稽古は、まず最初に鎮魂行という心の修行。ついで技を磨く易筋行。作務という掃除で道場を整え、最後に法話をします。それが普段の道場の基本的な流れです。

 

お稽古を続けることで、大きな声が出るようになった、学校で発表できるようになった、おとなしい子だったのに、と親御さんにびっくりされますね。子どもは特に、前に出て号令をかけたり技をやったりするんですが、そのとき失敗しても構わないんです。失敗なんて大したことじゃない、前に出たことが素晴らしい。自ら手を上げることで自信がついてきますし、自然と変わってくるんです。 

 

 

 

守るための強さ

 

守るための強さ

僕も少林寺拳法を始めた動機は「強くなりたい」でした。その頃の「強い」はケンカの強さ。当時は上級生とも一緒に遊んだり、ガキ大将みたいな子もいたから、単純にケンカの強さに憧れたんです。でも、少林寺拳法の教えを受けるようになって、本当の強さとはそういうことではなく、自分に負けない心や、怖くても立ち向かっていく気持ち、悪いことは悪いと言える勇気だと教わりました。

 

最低限自分を守れて、自分の大事な人を守れる。そのために「強くなる」。そんなことが、今通ってきている子どもたちにも伝わるといいですね。そして、自分が子どもの頃にそうであったように、楽しい、また来たいと思ってもらえればいいですね。

 

 

 

後進を育てるために

後進を育てるために

今、一番うれしいのは、幼稚園の頃から10年以上通ってきている子どもたちの中から、本気で指導者になりたいという拳士が出てきたことでしょうか。
後進を育てたい思いは最初からありましたから、このまま道場を引き継いでくれる人が育つといいなと思っています。

僕自身は一生、少林寺拳法を続けるつもりです。でも、道場は後輩に引き継いで、あとはサポートする側にまわりたい。一人で道場をやっていく大変さは分かっているので、一歩下がってサポートして、若い人がいい指導者になってくれれば、それが一番いい形だと思っています。