教室の先生や
教室に関わる人物を紹介する
「つたえ隊」。
第15回目は、母国語のフランス語を日本語で教える
ダヴィ・ビハンさん。
タレントでもある彼は流暢な日本語を操り、時に冗談を交えて話す彼は、話に笑いを挟むひょうきんさを持ち合わせている。
経営学を勉強した起業家としての一面もあるが、彼の周りに自然と人が集まるのは、この愛らしいキャラクターに依るところも大きい。
日本が好きで、気持ちに逆らわずに進んできた彼は今、日本で起業し、家族を持ち、日本での夢を追い続けている。
まっすぐに前を見つめるその先には、かならず「日本で」という思いがある。
「言葉はパズル。それを組み合わせて、人と仲良くなれる素敵なツールです。」
そんな彼と「ならいごと」との関わりについて聞いてみた。
元気あふれる少年時代
私は、元気が溢れ過ぎていると親に言われるくらい、よく喋る少年でした。周りには発想が豊かだと褒められたりもしましたが、親には「静かにしなさい!」とよく怒られていましたね。明るくて社交的だったんだと思います。
5歳くらいから、日本のアニメ、ドラゴンボールをよく見ていました。かめはめ波を真似したり、鏡の前でスーパーサイヤ人になろうとしていました(笑)。当時、日本のアニメはフランスで流行していて、僕はそういうアニメ番組を見て育ったんです。絵を描いたり、楽しんだりといった遊びの範疇にマンガがあるくらいで、その頃はまだ日本を意識してはいませんでした。
マンガへの情熱と武士道
フランスは小学校は5年、中学校は4年、高校は3年の義務教育があります。中学校4年の時、日本のマンガを売っている地元の小さな専門店に通っていたんです。サムライ・ディーパー・キョウ(怪奇時代劇マンガ)やスラムダンク、GTO…そこには、僕が見たことのないマニアックなマンガが並んでいて、大きな刺激となりました。マンガは趣味と言うよりも、パッション(情熱)を傾ける対象になっていきましたね。
私がよく好んで読んでいたマンガは江戸時代の話でしたが、武士道や神道、日本の考えが詰まっていました。そこで日本の文化に興味を持ったのかもしれません。高校ではスラムダンクの影響でバスケットボールをやっていましたが、もっと小さい7歳からは、高校教師の両親の勧めで柔道をやっていました。親いわく、元気過ぎる私のエネルギーをコントロールするためだったとか。まさに武士道の考え方ですよね。何となく日本を意識したのは、その頃かもしれませんね。
日本の魅力
「好きな女性をなぜ好きなのか?」に明確な理由が無いのと同じで、日本が好きな理由を語るのは難しいですね。でも敢えて言うなら、日本の魅力はエキゾチックなところ。そこに何となく惚れちゃったんですよ。マンガはフランス語でも語句の後ろに日本の漢字がちょこちょこ現れるのですが、その漢字の形自体にエキゾチックさを感じたんですよ。
食べ物もそう。マンガによく「弁当」が現れるんですが、これは美味しそう!こんな食べ方があるんだと感動しましたね。そこから、面白い!もっと知りたい!と本格的に興味を持つようになりました。日本を知った今でも、日本の悪いところを忘れるくらい日本が好き。趣味ではなく、日本好きはパッションです。日本の方には分からない日本の良さを僕が感じているのかもしれませんね。
僕自身、マンガがスタートで映画やドラマ等様々なジャンルの日本の作品に触れてきましたが、親が観ていた影響もあり、日本の古い映画も好きです。
金沢 そして静岡へ
私の通ったナンシー大学のある市が、日本の金沢市と姉妹都市だったんですが、日本人留学生が大学構内にいたんです。ワクワクしながら話しかけたら、金沢出身の人と仲良くなりました。その後、姉妹都市の交流プログラムで1年間金沢に滞在しました。
フランスで知った日本と、住んでみて知った日本の印象は少し差がありましたが、日本を知れば知るほど、興味が止まりませんでしたね。日本が好きだったので、私の専攻は世界史でしたが、独学で日本語も勉強していました。金沢から戻ってきた時、もっと日本を知りたいと、姉妹留学プログラムに申し込んだ留学先が静岡大学でした。
語学の勉強をゲームのように楽しんだ
大学で日本に来ると決まっても、日本語はほとんど話せない状態でした。日本が好きというモチベーションが私を勉強に駆り立てたんです。
私は、言葉をパズルピースのように捉え、ゲームを楽しむ感覚でやっていました(笑)。もちろん真剣にですよ。自分で言葉を組み合わせることができて、さらに、人とコミュニケーションが取れる…何て面白いんだ!と。自分の表現ができて、運命も変わる!それくらいの感動がありましたね。
活字を使って絵を描くような感覚もありました。日本語を使って、目の前の日本人と仲良くなろう!と思っていました。
フランス語は未来を拓くツール
フランス語を学ぶきっかけを僕は生徒さんに聞くようにしていますが、字幕なしでフランス映画を観たい、ボサノバの歌詞の意味を理解したい、旅行に行くときに活かしたい等、目的は様々です。一般的には女性が多いですね。
ただ、そういった趣味的要素で学習するだけではもったいないと僕は思います。
ヨーロッパでは、英語に次ぐ第二外国語として学習することが多いのがフランス語。日本では、外国語は英語を勉強することがほとんどですが、実はフランス語を選択することで、様々なメリットがあります。大学の入学受験にフランス語を選択することで、プラスアルファの加点があったり、フランス語圏への留学の可能性が広がったり…。そういったこともあり、最近では 中学生から勉強する人も増えていますね。
英語は勉強する人も多く、競争相手が多いですが、フランス語を身に付けて、英語+フランス語にすることで、人生の武器になると僕は思っています。
溢れるアイデアを日本で実現したい
日本の大学院、MBA(経営大学院)を経て、日本の企業に就職しました。静岡が一番住みやすかったので、静岡の会社で働き始めました。その時の社会人経験は今でも活きています。その後、起業家として、このラミティエ・フランス語学校を設立しました。
教師の顔とは別に、僕はタレント活動もしています。大学時代に演劇をやっていたこともあり、オファーを受けて、お笑い系や情報番組、静岡だとイブニングアイ、東京だと世界番付等、テレビにも出演しています。僕の夢のひとつは俳優になること。もちろん、言語を教えながら。教室でもタレント活動でも、とにかく無理をしない。キャラクターを作りすぎない。何事も、長く続けるコツは、無理をしないことだと僕は思っています。
そして、僕自身アイデアマンなので、頭の中にあるたくさんのアイデアを形にしたいと思っています。成功させるためにはまずやらないと。思い描くことで実現するアイデアがあると、僕は思っています。日本の悪いところや良いところ…日本のシステムの中で悩むこともありますが、僕は常に前進していきたいですね。