つたえ隊vol.12あとりえGureChan石原幸子さん

 

 

アトリエGure Chanにて

教室の先生や

教室に関わる人物を紹介する

「つたえ隊」。

 

第12回目は、ポリマークレイ、押し花などのクラフト教室

アトリエ Gure Chan

石原幸子先生。

インタビューの受け答えところどころに笑いを挟む、石原先生。
創作を楽しみ、出会いを楽しみ、偶然を楽しむ。
先生自身が、ポリマークレイを通した多彩な表現を楽しんでいる。
変わり者と言われた彼女が生み出す、独特の世界観。
溢れ出る好奇心と特異な着眼点を備え持った石原幸子の世界。

「予定通りも偶然も楽しむ。時には探りながら作品を作るのも楽しいですよ。」

そんな彼女と「ならいごと」との関わりについて聞いてみた。

 

 

 

 

“変わってるね”は褒め言葉


“変わってるね”は褒め言葉

小さい頃から図画工作が苦手で、折り紙もできませんでした。いわゆる不器用。母は和裁や洋裁、編み物もできましたが、私は針に糸を通すのも、引かれた線の上を縫うのも苦手。編み物の製図も読めず、母には怒られてばかりでした。

大人になって、その私がクラフトをライフワークにするなんて(笑)。私は、草間弥生の有機的なモチーフやインパクトのある色づかい、伊藤若冲(いとうじゃくちゅう)が持つ緻密な描写や構図…誰にでも評価されるものより、嫌いな人がいるものが好きでした。私自身、好き嫌いがハッキリしているからでしょうか。

先生を始める前に勤めていた呉服屋さんで、感覚だけで色合わせをしていた私は、「個性的で何か違う」、「変わってるね」、とよく言われていましたね。でも「あなたは変」、「普通じゃない」と言われることは、私にとって褒め言葉でした。

 

 



ポリマークレイとの出会い

 

ポリマークレイにハマった

ポリマークレイに出会ったきっかけは、学習フォーラムから来た案内チラシ。お花に関わりたくて押し花をずっとやってきましたが、他に面白くて無心になれる表現方法はないかと探していたんです。以前、軽量粘土でお花を作る講座を受けたんですが、それよりもさらに手軽で簡単、陶芸よりもとっつきやすかったんです。自分の想像力次第でどんなもでも作れそうな可能性を感じ、これでお花が作れたら面白い、私にも作れると、体験してすぐに直感し、どっぷりハマっていきました。

 

紙粘土は、着色や細工をする技量が必要ですが、ポリマークレイはクレヨンや絵の具のように簡単な色合わせができれば作れます。色のついた粘土を組み合わせるだけなので、すぐに色がイメージできます。放っておいても固まらないし、手のひらの温度で柔らかくなる粘土なので、途中で手を止めてもOK。いつ中断してもまた好きな時に始められて、オーブンで焼くまでは何度でも作り直しができます。軽いので肩も凝らずに作れるし、錆びないし、色褪せない。扱いが楽なのも魅力ですね。

 

 




細かいようで細かくない


はじめは太巻き寿司の大きさから

私自身、特にクラフトが大好きという感じではなかったんですよ。手先も不器用で、丁寧にゆっくり作ることは、どちらかというと苦手(笑)。ポリマークレイは自分がやってて楽しいからどう?が基本スタンスです。これなんて青首大根(笑)。

モチーフを楽しみながら入れ込んだり、ポリマークレイには私の遊び心を入れるようにしています。粘土はフィギュア、お花、スイーツデコの3つに大きく分かれますが、そういった細かいものが私自身、あまり得意ではないんです。

まず自分の手のひらサイズの太巻き寿司を作るイメージ。それをどんどん握って細くしていくことで柄が細かくなり、出来上がりが細かく見えるので、私が作っても作品が繊細に見えるんです(笑)。難しいことはひとつもしていませんよ。

 

 

 



自由なものづくりができるのがポリマークレイ

ポリマークレイの手の感触も好き

もうひとつのライフワークである押し花は、花のそのものの色を活かし、花の力を90%借りてレイアウトしていくものですが、ポリマークレイで必要なのは自分の想像力だけ。自分のすべてを駆使して作るものだと思います。できあがった時の感動や達成感はポリマークレイの方が圧倒的に高いです。

小さい頃、泥んこ遊びをしたことがあると思いますが、ポリマークレイに触れた時の手の感触はそれと似ていて癒しにつながっている気がします。私の場合、触っているだけで安心するんですよ。陶芸もパン作りもポリマークレイも、冷たくて柔らかい感触があります。こねる感触、皮膚に伝わる感覚が私には気持ちいい。陶芸は何回体験しても思い通りのものが作れませんでしたが、ポリマークレイは、気ままに自由に作れるところが好きです。ずーっと触っていたいですね。

 

 

 

 

 


私の宝物


スクラップは私の宝物

ポリマークレイは、1回で使い切らなかったものを再利用したり、土台にしたりしますが、私はそれをスクラップと呼んでいます。他の人からしたらゴミに見えるこのスクラップから作品を作ることもできるんです。スクラップ同士を組み合わせてカットすると、思いがけないほど魅力的な柄が生まれることがあります。

たくさん失敗しても、その先の可能性、次に何をするかを考えるのも楽しいですね。モチーフも、見る人の見方で動物に見えたり、他のものに見えたり…それも楽しいじゃないですか。スクラップから生まれて偶然できた模様も、立派な作品。スクラップはそれを教えてくれます。自由に探るように作品を作っていくのも、時にはいいものですよ。私にとってスクラップは宝物。どこでどんな模様ができるかわからないし、ひとつも無駄はありません。

 

日本と違い、電車が10分遅れるのは日常茶飯事で、天気の良い日にはカフェのオープンテラスでおしゃべりをして過ごす…。そんなのんびりと流れていく時間の中で、少しずつ凝り固まっていたものがはがれていき、気持ちに余裕ができていきました。
自分に足りなかったものが何だったのか、それにやっと気づいたのです。

 

 



インスピレーション

日常に隠れたインスピレーションを大切に

インスピレーションは、日常に隠れています。例えばクルマのヘッドライト。前の車のLEDのテールランプが花模様や星形に見えた瞬間、「あ、可愛い」と、とりあえず手帳に描きとめておきます。そのメモを見て、そのマルの中をどういうデザインにするか、何色にしたらいいかを考えていると、楽しくて、夜も寝られません。
ひらめいたら、うとうとしていても描きだしたりして結局眠れなかったり(笑)。そういった何でもない無意識の時に、デザインが沸くんでしょうね。箱根に旅行すれば、土産物の寄木細工を参考にイメージを膨らませ、そこからモチーフや色合わせを考えたりもしました。何か見に行けば何かをもらってくる感覚、探している感覚が私にはありますね。

 

 

 

 


自己研鑚


伝えたいこと.jpg

千葉や東京に通い、教室を構えた今でもポリマークレイを学んでいます。新しいものでも興味があれば、私はなんでもやって試してみるタイプなので、トレンドを知っておくことも教室の大切な準備だと思います。「知らない」、「はじめて聞きます」では、生徒さんはがっかりです。常に情報をポケットに入れて話したり答えたりする必要があるので、アンテナを張って半歩先を行くために、今も勉強しています。

先生と呼ばれる以上、きちんとしたものが作れないと恥ずかしいし、さすがって言われたい(笑)。描いたデザインに忠実に作ることが、完成した時の形の美しさを左右するので、正確に作ることを大切にしています。カット間隔の正確さや形の美しさも大切です。先生と呼ばれることで、無意識に自分自身が襟を正しているのかもしれませんね。

これからも、細かいところにも気を配ってポリマークレイを作り伝えていきたいです。教室の目的はポリマークレイを好きになる人を増やすことですが、私のレッスンのモットーは、趣味の人は楽しく、資格を取りたい人には厳しく。なあなあにしてしまうと身にならないので、資格を取る人には「超」厳しくしています。趣味の人には、アクセサリーなど、気軽に身に着けられるものを自分の手で楽しんで作るよろこびを伝えたいですね。

自分自身、、まだまだ勉強の途中です。押し花は何度か賞をいただいているんですが、ポリマークレイは出品したことがないので、これから挑戦してみたいですね。