スペシャリストインタビュー揚張あや子さん

 

 

吸い込まれそうな深い瞳に、眩しい輝きを放つ少女のような 笑顔。

光を受けて彩りを変化させるプリズムのようであり、周りを明るく照らすシックなステンドグラスのようでもある。

その活き活きとした表情が、彼女の好奇心とアンテナの高さを物語り、ミツノシマというひとつの光を放つ。

口角の上がった利発なこの女性は、主張と抑制のバランスを心得、相手への配慮を決して忘れない。


それはまるで、食べられるまでその彩りでメインを飾り、口に含まれるとメインを引き立てながらじっくりと味わいを表現し始める、ジャムそのもの。 

まっすぐにこちらを見て答えるあや子さんの瞳の奥には、小さく揺らめく情熱のあかりが灯っていた。



現在の活動を教えて下さい。

 

ミツノシマのジャムを広める

イベント出店を中心に、自宅のアトリエで作ったジャムを販売しています。静岡をはじめとする店舗での委託販売もさせていただいてますが、私のジャムを使ったメニューを提供してくださっている飲食店さんもいて、ありがたいです。相談を受けて新商品の開発もしていますが、ハーブコーディネーターの資格があるので、美容効果等、ハーブの効能も取り入れたジャムを開発することもありますね。

そしてたまにですが、ワークショップも開催しています。子供向け(未就園児から中学生)講座では、果物をジッパーバックに入れ、揉んで潰して、五感を使ってジャムを作りました。色の変化を見ながら作って食べて…脳にいい刺激がいくんですよね。自分の作ったものだとさらに美味しく感じたり、大好きなおばあちゃんの畑で取った野菜だと苦手でも無理して食べたり…そういう経験が生きて子供は成長していくんですよね。

 

 

 

 

ジャムアーティストとは? またジャムアーティストになったきっかけを教えてください。

 

ジャムアーティストは造語

ジャムアーティストは造語です。色を綺麗にすることを大切にしているので、どこか作り手や作家という呼び名がしっくりこなくて。起業前にジャムの個展をやろうと思っていましたが、そこで出会えた写真家の方に「ジャム作家よりもアートの方がいいんじゃない?」とアドバイスされ、ジャムアーティストと名乗るようになりました。

ジャム作りのきっかけは、イチゴ農家を手伝う義理の姉。真っ赤に熟れた一番美味しいイチゴは売り物にならないと知り、残念でもったいなくて…それを家で加工してジャムを作るようになりました。息子の幼稚園で、かき氷のシロップはアレルギーや着色料が怖いと話していた時に、私はこういう安全なジャム を作っているよとシロップ代わりに提供したのが、私のジャムが外にでるきっかけでした。ひとりでは食べ切れない量を作るので、委託販売をお願いするところからのスタートでした。
もうひとつのきっかけは母。明るい気持ちになって欲しい、元気になってもらいたい、という気持ちから、キラキラ綺麗なジャムを作るようになりました。

 

 

 

 

ミツノシマのジャムのコンセプトを教えてください。

 

絵の具のパレットのようなジャム

色を大事にし、それから味を調えていくやり方でジャムを作っています。この果物とこれを合わせると例えば黄色と緑でライムグリーン、赤と白を混ぜればピンク…絵の具のパレットのようなジャムがコンセプト。女性が洋服やジュエリーを見て、綺麗な色やキラキラした様子に感動したりしますよね?食べ物も、そういった洋服感覚で楽しんでもいいんじゃない?というのもあり、大人も子供も楽しんでもらえるような食づくりを心掛けています。

後はどうしたら食欲や興味が沸いたり、楽しくなるのかも気にしています。例えばこの生姜のジャムなら、若い方は炭酸で割って辛めのジンジャエールに、お年寄りは焼酎に入れてお湯割りにして等、たくさんの方に楽しんでもらえるように意識しています。

ミツノシマのジャムはソースとジャムの中間だという位置づけですので、楽しみ方もそれだけ幅広いのかもしれません。お肉と絡めたりしても相性がいいんですよ。
*ミツノシマのジャムは食感が残った「噛む」感覚のジャムで、今まで100種類以上のジャムを開発したとか

 

 

 

食材とは、どのような向き合い方をしていましたか?  

 

色を意識した素材選び

特にこの素材をジャムにしようという判断基準はありません。作ろうと思う動機は身近です。
レンコンはもともと友人がのどが弱くて、レンコンで作ってよと軽くいわれたのがきっかけ。彼女のために4種類くらい作りました。
バラのジャムは、元々はバラが有名な高山ローズさんの食用のバラをどうにできないかと相談されたのがきっかけでした。水分が少ないから難しかったのですが、何とか形にしました。ひとビン2,500円くらいでも、今は時期が来て販売すると、その日に完売。

色を常に意識し材料を選ぶようにしていますが、なるべく相談をいただいた時は、その食材が商品として実現する方向で考えるようにしています。

私自身、脂っこくない和食が好きで毎日自炊しますが、色目や野菜のカットの仕方、盛り付けも勉強になるので、外食する時は意識してフレンチやイタリアンに食べに行くことはあります。味が繊細なフレンチやイタリアンはソース文化なので、学ぶことが非常に多いですね。

 

 

 

転機はありましたか?

 

全ての出会いが全ての転機

主婦だけをやっていると、どうしても社会との接点が少ないので孤立しますよね?気晴らしにケーキやジャムを作っていたのが原点ですが、この前にもお話しした通り、きっかけがあってジャムを販売するようになったのが転機でしょうか。
それまではママ友だけだったのが、ミツノシマを始めてから、世界を目指す前向きな方々と知り合えるようになりました。その人その人の個性に毎回刺激を受け、その出会いひとつひとつが毎回の転機。

人脈がジャムのレシピになっていって自分の中に息づいていくというか、いろんな世界を見させてもらえるという点で、やはり起業は転機でした。いろんな視点やアンテナができました。

 



印象に残る出逢いを教えて下さい。

 

出逢いはきっかけ

起業した時くらいに出会ったグランドホテルの○○さんですね。彼はその当時下積みバーテンダーでしたけど、“僕が決裁者になったら、必ずあや子さんのジャムを使ったカクテルを作るから”と言ってくれて。それから1年後に電話が掛かってきて、私のジャムがグランドホテルのラグジュアリーコンフィチュールカクテルとしてメニューに並ぶようになった時は感動しました。今でこそ東京でも流行っていますが、実はコンフィのカクテルは浜松で彼がはじめに考え出したもの。彼のようにどんどん先を見ている方と出逢えることは、私の刺激ですね。

それから、ジャムで起業するきっかけをくれたカメラマンさん。商社に勤めていた方なんですけど、やっていることは色を出すというれっきとしたアートなんだから、アーティストだよと言ってくれた方です。

さらに浜松の女性議員さんとの出逢いもそうですね。私と同じ子持ちの方ですが、起業の時に悩んでいて相談したんです。「隣に寄り添うだけが子育てじゃないの。一生懸命働く親の背中を見せることも子育てよ。」と言われて、前が開けましたね。 今もいろんな方にバックアップしていただいたり、拾い上げていただいたり…本当にありがたいですね。

 

 

 

こだわり、大切にしているものを教えてください。

 

忙しくてもご飯を作る

私自身母親なので、子どもにご飯をきちんと作る「習慣」を大切にしています。
子どもに母親の味を覚えてもらいたいのもありますが、一緒に食材を切ったりする経験も大切。極力、打ち合わせや配達があっても、ご飯だけは一緒に食べるか、作ってから出るようにしています。きちんと役割を務めて外に出ることが大事かなと。

あとは、私自身成長途中で子どもを産んだので、子ども同士、子どもと共感しながら一緒に成長していきたいなと思っています。子どもから教えてもらったり。子どもは鏡ですから。

 

 

 

夢を教えて下さい。

 

広がってコラボして共に成長!

自分の中で、今年はコラボレーションの年。夢の共有や、やりたいことの幅を、コラボする方と一緒に広げて表現していきたいですね。FacebookやTwitter、Instagram等のSNSつながりでコラボが実現した人たちは、挑戦という共感がある仲間です  。ジャムをきっかけにして、そこからいろんなことに挑戦したいと思っています。ジャムをアートとして提案してみたり。

ミツノシマのミツは、甘い「蜜」、食べた人にしか分からない秘「密」の味、「満」足する、「密」集する、という意味もあります。ミツノシマという屋号は入り口で、このコラボや出会いがひとつひとつが「島」なんです。

私自身ひとりで始めたのでひとつの島。その島に橋が架かって国になっていくイメージです。それがここ岩品珈琲さんや、ならいごとさんだったり、それぞれが一緒に成長できて輪が広がっていく…そんな夢を持っていますので、ミツノシマのブランドを育てていくこれからが楽しみですね。

 




何かやりたい、始めたいという方にメッセージをお願いします。

 

やりたいことを口にしてみる

叶えたいこと、やりたいことを口にすることです。恥ずかしがらずに、潔く話することが大事だと思います。
私は、ジャムをアートにしたいと言って馬鹿にされても、ずっと周りに話していましたよ(笑)。どこかに、響く人がいて、真剣に考えてくれる人がいたりするんです。拾って大事にしてくれるパートナーは、どこかにいると思いますよ。

人は、人の夢を叶えたい、人のために行動したいというのが根本に根付いていると思うんですよ。ジャムを塗ってアートにするのかって言われた方もいらっしゃいましたが、それも何かのヒントになります。
何も言わなければ、何も始まらないですよね。

(取材協力 岩品珈琲

 

 

 

 

岩品珈琲エントランスにて

 


 


 

 

PROFILE

ジャムアーティスト 揚張あや子さん

ミツノシマ 代表

 

 

Official web site

ミツノシマ