スペシャリストインタビューVol.39 インターナショナルヨガセンター主宰 ケン・ハラクマさん


ケン・ハラクマ。
彼の著書から、まっ先に浮かんだ姿は、ボディビルダーのように筋肉隆々の鎧をまとった逞しい男性。ビジネスマンとして忙しく飛び回る傍ら、北極やエベレストでの臨死体験、サーフィン主体の過去の生活‥。著書から窺い知れる過去が、その像を作り上げたのかもしれない。しかし、実際のその人は、ミニマムで機能的な筋肉をたたえた、しなやかな人間だった。無ければ作ってしまおう、とヨガ黎明期(創世記かもしれない)にヨガスタジオを設立したり、バイタリティも高いのであるが、鼻息は荒くない。男性には珍しい、非常にやわらかでニュートラルなスタンス。アシュタンガヨガの伝道者(ご本人が先生という表現を好まない)は、人の言葉を否定せず、意見を押し付けず、全てを受け容れる。 「調和」と「対話」と「調整」。 ヨガとはポーズではなく、生き方である。とても客観的に自分を見つめるツールであることを教えてくれた。

 

 

 

 

ヨガの伝道者としての現在の活動を教えて下さい。

 

インターナショナルヨガセンター主宰 ケン・ハラクマさん

20年前に自分が立ち上げたインターナショナル ヨガ センター(以下、I.Y.C.)で開催する多くのクラスをマネジメントしています。今年で21年目を迎え、教え子だった生徒さんがI.Y.C.で教えたり、巣立って独立したりしています。一般の方もインストラクターを目指す方も対象としています。4つあるI.Y.C.のスタジオで実際に私が受け持っているのは、30人程の世田谷スタジオ。1年の1割は東京で、それ以外の9割は東京以外の日本各地や海外で、インストラクターになるためのヨガのノウハウや、ヨガのカテゴリーについて教えています。

その合間を縫ってワークショップも開催していますが、東京へ、は着替えを取りに帰るといった感じです(笑)。

 

 

 

ヨガを始めたきっかけを教えてください。

 

インターナショナルヨガセンター主宰 ケン・ハラクマさん

 元々ストレスフルなビジネスマンで貿易関係の仕事をしていたんですが、たまたま旦那さんの仕事で来日していた外国人ヨガ講師と出逢い、ヨガを1回やってみましょうということになってやってみたのが一番はじめでした。いざやってみると、今までに無い感覚を味わいました。ポーズをガイドしてくれている時は、力で何とかしようとして物凄く辛くて、二度とやらないくらい思っていました。でもそのクラスの中で、「力を入れるのではなく抜くこと」を一貫して伝えられました。”休んでいいですよ”とシャバアサナ(死体のポーズ)を取っている時に、眠ってしまい、全く意識が無くなって、ガイドで少しずつ起こしてもらっている時、壮快感が体に溢れました。スポーツやサウナの後とは全く違う、ポカーンという空間を感じるような壮快感。辛い→嫌だな→やめたい→何コレ?→壮快!…。仕事の合間を見つけては、その人に教えてもらうようになりました。

ウエスタンナイズされたヨガを習えるところが日本に無かったので、先生が教えて、私は場所を提供するという形でI.Y.C.ができました。教える為ではなく、自分が習う為に作ったんです。習ったものを自分が伝えるようになり、伝えながらもいろいろ吸収していきました。先生は3年で帰国したので、あとは自分で形を作っていきましたが、その先生に基礎を教わることができました。

 

 

 

印象に残る出逢いを教えてください。

インターナショナルヨガセンター主宰 ケン・ハラクマさん

  アシュタンガヨガを教えていた先生で、アシュタンガヨガの創始者、その当時でも80歳を過ぎていたシュリ・K・パタビジョイス氏です。私が習った講師の方とは違った方式のヨガで、サンフランシスコのヨガカンファレンスに行った時にはじめてビデオを観たんです。6人の先生をご本人がガイドしているものでしたが、まだ誰もそのプログラムを教える人がいなかったので、2年間そのビデオが先生になりました。その2年後にインドに行ったんですが、毎日ビデオで見ていたので、「はじめまして」という感覚はなかったんですが(笑)。

それから先生が5年前にお亡くなりになるまで10年間インドに通い続けました。自分が習った先生とは別の方式でしたが、インドに通いながらヨガの実践をしていくうちに、だんだんと自分の練習が変化していきました。徐々にアシュタンガヨガが日本でも認知されるようになったので、その変化した練習と習ったことを混ぜて、クラスで教えるようになったんですよ。この4、5年は、自分が吸収したことを伝える普及活動がメインとなりました。

 

 

 

 

 

 

ヨガの伝道者としてのこだわり、大切にしているものを教えて下さい。。


インターナショナルヨガセンター主宰 ケン・ハラクマさん

まず、自分が教えているという感覚を持たないこと。誰にも教わらずにひとりでポーズしている時は、自分の体だけで繋がっていましたが、今はガイドしている人たちの手足を使って、自分がヨガをしていると感じています。

今日のワークショップにいた約40人の体を使って、自分もヨガをする訳ですが、その人達とは先生と生徒の関係でもなく、仲間でもなく、私の一部のような感覚かな。始めた頃に私がつまづいた箇所とか、できないことを見るのも練習。”できなくていいですよ”と言いつつ、やろうとする気持ちを無くさせない。それを伝えています。

 

インターナショナルヨガセンター主宰 ケン・ハラクマさん

 できないからダメではなく、できないからやっていると、できる方向に行くものが多くなるのです。すぐにできないから向いていないということはありません。自分がひっくり返ったところで、生徒さんがひっくり返ると、繋がるんです。”ひっくり返っても笑っていようね”と生き方や気持ちの部分を伝えられる。テクニカルな部分ではなく、生き方の部分。ひっくり返ってもいいんだと思えば、ラクになって続けられます。自分の生活に活かすためにヨガをやっているという感覚が伝わればいい。 

 

ポーズができたことに満足して次々新しいポーズを追い求めることは決して否定はしませんが、その次にどうするかが大事。ポーズが先か、考え方が先かということを理屈で説明することは難しいので、体感できるシチュエーションを作り出すこともあります。

 

 

 

 

 

 

夢とはどういうものですか?

 

インターナショナルヨガセンター主宰 ケン・ハラクマさん

  現実的に今ないものの対して、意識の中にある願望に向かっていくことが夢だとしたら、それが計画になり、現実になったりするその種こそが夢だと思います。夢は無いかな。こうなったらいいなあとか、あんまり無いんです。アイデアとしては出てくるんですが、すぐにやりたいことが目標になり、いろんなツールが出てきて具体的に決まって行った結果、現実となるので。 夢って言うと、手の届かない叶わないものというイメージもありますが、タイムリーにデイリーに状況の中から目標として変化しさせてゆくものだと思います。ヨガをしているとそういった変化をより感じられるようになったのかもしれません。

 

 

 

静岡という場所との関わりは?

インターナショナルヨガセンター主宰 ケン・ハラクマさん

ヨガを伝えに来た場所としては早い段階で関わるようになったのが静岡でした。

ヨガを始めて10年くらい経ったあたりから、毎月来ていました。毎クラス50人くらいが習いに来ていたんですが、小田原や名古屋の方も静岡の教室に参加していました。そのころの生徒さん達が、今はスタジオや教室を持ったりしています。大阪よりも静岡が先でしたね。

地方に出て伝え出す場所としては静岡が一番はじめだったんですよ。

 

 

 

 

 

何かやりたい、何か始めたいという方にメッセージをお願いします。

 

インターナショナルヨガセンター主宰 ケン・ハラクマさん

とりあえず、やりましょう!(笑) 

自分が今このままではなくて何か新しいことをやってみようと思ったり、やりたいことを探している時、何をしていいか分からなかったり、始めることを躊躇している時には心配や不安があると思います。でもやっちゃう。それだけなんですよね。やるって決めたからやるぞ!ではなくて、やってみて、違うなと思えばすぐ止めて方向転換をすればいいと思います。優柔不断でいいんです。極めようとすると大変なものばかりかもしれません。やってみようと始める、これちょっと違うなと止める。良い「加減」にするんです。こだわって極めようとすると、楽しかったものが辛くなってしまう。適当に心地良く、程よい状態で続けられればいいのではないでしょうか。

ヨガでも、最初はすごく気持ちいいなあと感じていたのに、辛くて嫌になってしまうこともあるでしょう。大切なことは、自分の声を聞きながらやることです。やめたくなくなったらやめる。続けなくては、ではなく、定まらないこともよしとする。その都度自分の気持ちや状態で変化させてあげて、良い「加減」をする。ただ自分の気持ちにだけ正直になると、単なる自分勝手。かと言って、周りに合わせてばかりいると自分を押し殺してストレスになる。周りと自分を調整してバランスを取ることが大切です。

 

 


 



 

 

ケンさんにとって、ヨガとは?

 

インターナショナルヨガセンター主宰 ケン・ハラクマさん

 最初は、体を動かして、リラックスをするフィジカル的なものだと思っていましたが、考え方が自分の行動パターンを変えると分かった時、それをどう見ていくかがヨガの練習に変化したんです。つまり、今はメンタル的なものだと思っています。

ポーズしてる時間もヨガ、起きて活動している時間もヨガ、実は寝ている時もヨガをしていると私は思っています。寝ている時が、起きているときの内容を変えるので、どう寝るかもヨガの練習なんですよね。24時間ヨガ。起きていて人と喋っている時も、仕事している時もヨガをしていると思います。

 

 

 

インターナショナルヨガセンター主宰 ケン・ハラクマさん

 


 

PROFILE

インターナショナルヨガセンター主宰 ケン・ハラクマさん  

インターナショナルヨガセンター主宰。

 

1994年、同センターを設立し、同年中国万里頂上の一部を中国政府より特別使用許可を得て、IWILL NOT COMPLAIN INTERNATIONALマネージメントの為の野外企業研修所設立に携わりながら北京にて楊式太極拳をマスターする。1997年ストレスバスタース設立。企業を対象にストレスの為の健康プログラムを展開指導する。1998年タイ国バンコク ワトポー寺院にて古式タイマッサージのセラピー資格取得。国際ホリスティックセラピー協会理事。インドのマイソールで、パタビジョイス氏に師事し、日本人で初めてアシュタンガヨガの正式指導資格を取得。現在、IYC及びアシュタンガヨガジャパン主宰。 毎年恒例となった日本の大型ヨガイベント「ヨガフェスタ」の発起人の一人であり、海外においても香港で開催のアジア最大のヨガイベント「アジアヨガコンファレンス」 、タイ・バンコクにて開催のヨガジャーナル・タイランド主催 「ヨガコンファレンス」 、韓国にて開催の 「韓国ヨガフェスタ」、台湾台北「ヨガライフフェスティバル」等にヨガ指導講師として参加するなど、精力的に活動している。日本におけるヨガの第一人者として、多くの指導者も輩出。著書に『ヨガから始まる』(朝日出版社)、『ココロヨガ』(セブンアンドアイ出版)、監修に『ヨガマーラ』『アシュタンガヨーガ入門』(産調出版)、『SHIHO おうちYOGA』( ソニー・マガジンズ)、監修した映像作品に『Yoga TV mind peace』(BSフジ)などがある。 


Official web site http://www.iyc.jp/

 

 

 


取材協力/Ambiente アンビエンテ http://ambiente.naraigoto.jp/
     静岡市葵区呉服町2-5-1