常に「新しい何か」を求めて進化し続ける、すろーかる編集長の小田さん。
8年目を迎えた媒体誌を取りまとめ、冷静な分析で舵取りをする一面があるかと思えば、忙しい日常やクライアントの陰に隠れた「ワクワク」たちを常に追いかける、少年のような無垢さも垣間見える。
「今のスタッフが宝」と言い切る、擦れない正直な心の持ち主が、時折見せる屈託の無い笑顔は、とてつもない輝きを放っていた。
編集長としては冊子の発行にあたっての総括、
本1冊のコーディネートです。また企画の出し方や割り付けを考えながら、自ら営業もしますし、取材や編集•校正にも関わっています。
しかし最も重要な仕事は、スタッフそれぞれの士気やモチベーションを上げることだと思っています。
カッコ良く言えば、本を作るだけではなく、その先にある、それぞれの目標を見つける手助けをするというか‥。スタッフ各々のパーソナリティーを分析して、その人に合ったサポートやコントロールをする心理カウンセラー的な働きを心掛けています。
でも…それは時に、ふざけてスタッフの邪魔を積極的にしているだけなのかもしれません(笑)。
なにしろ僕は編集マンではなく、根っからの営業マンなので。
前職の広告代理店では、クライアントのプロモーションが主業務でした。
しかし仕事の中で「世の中に無い初!」「面白くてワクワクすること」「他の人がやっていないこと」を探す自分がいて、毎日モヤモヤしていました。その頃に僕をすごくかわいがってくれた祖母が認知症で亡くなり、高齢者に向けた情報が極端に少ないことを感じました。そこで、高齢者向けのフリーペーパーを企画して当時のお客さんに話をしたところ、“それは面白いからやってみなさい“と、今の社長と引き合わせてくれたことがきっかけです。
一番は5人の初期スタッフとの出逢いです。
夜の9時くらいに会社に戻り、そこから企画の話をはじめると‥気づくと夜中の2時なんてことも多々あったり。会議とかではなく、そういうとりとめのない話でまとまってしまう関係性とか‥。
苦楽を共にしてきたスタッフが「今のすろーかるの全て」です。
スタートして、すぐに粒ぞろいの5人が揃ったことは、本当に奇跡に近いと思います。
内容に関しては、読んだ人が面白いと感じてもらえることです。
実は僕自身、情報誌をほとんど読むことはありません。だから僕が面白いと思えば面白い(笑)とか。それもあながち間違いでもない気がします。
フリーペーパーの魅力って、モノの価値の出し方だと思っているので、これまでフリーペーパーを読まなかった人が見て読んで楽しい一冊を目指しています。
読者が“お店に行こう“ってテンションを上げられるような冊子でありたいんです。細かい話だと、売り本を目指した雑誌づくりをしているので、デザインは「見やすく、オシャレに、キレイに」。写真は、ウチっぽい「ナチュラルであったかいテイスト」のもの、取材では「ストーリー性」を重視していますが、より多くの人に伝わる客観性も大切にしています。
そして、スタッフが楽しく仕事ができること。これは何より大事です。
特に意図やビジョンがあったわけではありませんでした。
高齢者向けで企画をスタートさせましたが、雑誌づくりを考える中でその一つ下の世代へ働きかけることにしたんです。
そうなると、ライフスタイルや地域とのつながりを企画することが多くなり、結果、その町だったり人の面白さを表現するようになっていきました。
こだわりとしては、「この町はこういう町だ!」と、すろーかる側では言い切らないようにしていることでしょうか。
僕らが誌面で紹介させてもらったお店たちをつなげるのは、読者さん自身であって欲しいので。
ただ、時代は変わるし移ろうものだからこそ、常に先行し変化していかなければ。と常に思っています。
今のこだわりも変えるべきであれば、それに取り組んでいきます。
情熱大陸とか、テレビのドキュメンタリー番組に出ることです(真面目に)。
夢=目標なんでしょうか? 「夢しか叶わない」と言った友人の言葉を大事にしています。
ただ、計画性がないからか、2年後の夢を描けても、10年後の夢を描けないんですよ。
あまのじゃくかもしれませんが、常にワクワク新しいことを考え、それをやり続けていくことが僕の夢。
日々模索し、精進し、手にした結果が夢の形なんでしょうね。
失敗してもいいから、かじる程度でもいいから、まずは始めてみることをオススメします。
やりたいことがある。始めたいことがある。それは運•天•地•人すべてが後押しした「スタートのタイミング」なのかもしれません。
僕もすろーらいふ創刊の時はそうでした。
やってみなければ分からないことは、世の中にたくさんあります。
悪いものを良くするのは簡単ですが、良いものをさらに良くするのはすごく大変なことだということにも気づきます。
そういうことも、まずは始めてみなければわかりませんからね。
個店各々が儲けるのではなく、その町を知ってもらうお祭り、イベントによって培われたつながりこそが地域活性なのかなと、最近は感じています。
そのお祭りをすろーかるの誌面で繰り広げられたら…と企画しています。
その地域が潤うと、これまで訪れることがなかった新規のお客さんが増えます。
そうすると、新規店であっても老舗店であっても意識が変化しますよね。
町の人たちのモチベーションを上げられるように、作る側も取材される側も、お互いが成長してプラスになってゆくような関係を作ることがすろーかるの使命。最近はそう思って誌面作りをしていますよ。
(株)すろーらいふ すろーかる編集長 小田庸介(おだようすけ)さん
静岡市生まれ。
高校卒業後、コピー機、通信事業などの販売会社にて営業職に従事し、コミュニケーション能力、市場性を学ぶ。自身でも独立開業をするなど精力的に仕事に取り組む中で、2006年にフリーペーパー「すろーらいふ」を立ち上げる。編集長として企画から営業・編集に渡る全てのセクションで活躍し、静岡で人気ナンバーワンと呼ぶことのできるフリーペーパーに仕上げている。昨年7月に「すろーかる」と名前を改め、現在73号にものぼる刊行を実現。
信頼できる発言と親しみやすい人柄で、クライアント・業者にも一目置かれる存在である。
すろーかるは、日本フリーペーパー大賞2013「地域密着部門」優秀賞を獲得。http://furipetai.nfpa.jp/nominate/community_based.html
すろーかる公式サイト http://www.slow-life.co.jp/
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取材協力 Rama http://www.rama-art.com/