スペシャリストインタビューVol.33 野菜ソムリエ 天野友江さん


輝く笑顔の彼女が手にする野菜は、彼女に負けないくらい輝いている。
音に意味を持たせるのが歌詞ならば、食べて何となく感じる味わい、抽象的だった野菜の魅力に具体性を持たせるのが彼女の言葉だ。知っていて噛みしめるのと、知らなくて食べるのとでは、美味しさが断然違う。食材や畑の話が登場する食卓とは、何と素敵なことだろう。
彼女はもの言わぬ野菜達の「代弁者」だ。

 

 

 

 

野菜ソムリエとしての現在の活動を教えて下さい 。 

野菜ソムリエ 天野友江さん

野菜の魅力を伝えるための講演やメディア出演、セミナー講師等をしています。最近は講師業が多いですね。
現場としての料理教室ももちろんですが、食育の一環で子供達に田植えから稲刈りまで体験してもらう青空教室に参加したりもしています。
直接生産者さんのところに行って一緒に農作業をしたり、大切に育てている野菜のお話を伺ったりしています。
やはり机上より現場!毎回学ぶことがとても多いんです。
また、少しでも野菜を好きになって欲しい一心で、「フルーツカービング=(野菜や果物の彫刻)」のワークショップの開催もしています。
フルーツカービングはタイが本場。王室宮廷料理のおもてなしを意味するものなんです。タイへの短期留学で技術を習得しました。

 

 

 

 

 

野菜ソムリエになったきっかけは?

野菜ソムリエ 天野友江さん

 元々好きだった料理ですが、結婚を機に健康面にも気を遣うようになりました。双方の親が家庭菜園をしていたこともあり、まずは野菜に詳しくなりたいなと思い、色々と調べていく中で「野菜ソムリエ」という資格を知りました。
少しミーハーなお話でお恥ずかしいのですが、その制服のかっこ良さに惹かれた部分もあります(笑)。初めは趣味の延長線上でしたが、その学ぶ楽しさにハマってしまい、その後、食に関する様々なジャンルに興味を持ち、気付けば8個以上の資格を手にしていました。
複数の資格の中からなぜ野菜ソムリエを中心に活動しているのか。それは大好きな野菜の魅力をもっともっと伝えたいからなんです。生産者さんは作るのはプロだけど、その良さや想いを伝えるのは苦手、という方がとても多いんです。
「私が代わりにその魅力を伝えたい。」と思うようになったのがきっかけですね。

 

 

 

 

 

印象に残る出逢いを教えて下さい。 

 

野菜ソムリエ 天野友江さん

ジュニア野菜ソムリエになったばかりの頃、静岡県内でご活躍だった先輩野菜ソムリエの 山城知美さん(現シニア野菜ソムリエ、野菜ソムリエコミュニティ遠州三河会長)と出会いました。山城さんは野菜ソムリエコミュニティ静岡の初代会長さんだったのですが、当時の私からみたらそれはそれは雲の上の人のような存在でした。

その後山城さんの料理教室のアシスタントをさせて頂く機会があり、憧れはますます増していきました。限られた時間の中で今後の私の夢なども聞いて下さり、ご自分の経験談を交えながらたくさんのアドバイスをして下さいました。私がジュニアから野菜ソムリエにステップアップしたい。そう強く思ったのはこの日が最初だと思います。その後、猛勉強をし、めでたく野菜ソムリエとなり「職業=野菜ソムリエ」として歩き出すことができました。翌年、山城さんはコミュニティ静岡の代表から退き、コミュニティ遠州三河を発足なさいました。

2年ほど経った頃、2代目の静岡代表から次期代表のお話を頂くのですが正直とても悩みました。というのも、ちょうど起業したタイミングと重なり、多忙な毎日でしたし、あの憧れの山城さんと同じ立場に私が立っていいものか。やはり私にはまだ荷が重いと。そこで東京出張の帰りの新幹線から、山城さんに「ご相談があるのでそちらに伺いたい」とメールをしました。山城さんは浜松在住ですので、ここまで来るという内容にただならぬものを感じたそうです。私の質問攻めも、不安な気持ちのマシンガントークもどんと構えて聴いてくださいました。そしていつものように優しく、そして時には厳しく誠実に、様々なことを話してくださいました。
今の私があるのは、山城さんのおかげだといっても過言ではありません。彼女から学んだことは宝物です。そして今も一番尊敬し、憧れている方です。

 

 

 

 

 

独立のきっかけは?

 

野菜ソムリエ 天野友江さん

最初は派遣会社に登録していたのですが、やはり都内での募集が多く、静岡ではなかなか自分が思うようなお仕事はありませんでした。
ジュニア野菜ソムリエの頃から生産者の方とマルシェなどをしていたのですが、それがなかなか好評を頂き、天野という面白い子がいるよ、と農関係の方に少しづつ口コミで広がりはじめたんです。元々話すのが好きでしたし、何より大好きな野菜の話を存分にできることでイキイキしていたんだと思います。

 

直接お仕事を頂く機会が増え、これは職業として成り立つのでは?と考え始め、本気でやってみたいと主人に相談しました。ありがたいことに、反対はなかったですね。今でも一番の理解者であり、応援団です。そして、埼玉県にある大手百貨店の催事のコーディネートのお話を頂いた時、独立を決めました。お店を開店したりするのと違い、売るものは自分自身。特に資本金も要りませんので起業に抵抗はありませんでした。

 

 

 

 

野菜ソムリエの仕事をする上でのこだわりや大切にしているものを教えてください。

野菜ソムリエ 天野友江さん

主役はあくまで野菜であり、自分ではないということです。とはいえ、野菜の話をする私に共感してもらえなければその話を聞いてはもらえない。ですから清潔感や言葉遣い、身だしなみには気を配っています。

私がきっかけで野菜が嫌いになることがないように。内容も一辺倒にならないように心がけて、お話をさせていただく対象者によって話し方も内容も変えたりしています。難しい言葉を使おうと思えばいくらでもできますが、私はあまりそれが好きではありません。魅力を伝えるのが仕事の野菜ソムリエですから、いかに噛み砕いて分かりやすく皆様にお伝えするかというところが大切だと思っています。栄養や調理のプロではなく「野菜の魅力を伝えるプロ」ですから、より聞き手に近いスタンスを目指しています。先生ではなく、野菜好きの近所のお姉さんみたいな感じでしょうか。

 

 

 

 

 

これからの夢は?

野菜ソムリエ 天野友江さん

野菜といえば、「野菜ソムリエ」。
野菜ソムリエが社会のインフラみたいになったらステキだと思います。いずれは野菜ソムリエがいなくても、皆さんが当たり前にそれくらいの知識を持つようになったら嬉しいですね。個性的な野菜ソムリエ達が増えて、様々な切り口で野菜の魅力を伝えたり…。いろんなキャラクターの野菜ソムリエを増やすことは、コミュニティ代表としての私の夢ですね。

そしてもう一つ夢があります。それは野菜を中心にしたライフスタイル全般の提案ができる場を作ること。私に共感してくださる方を増やすことが、野菜に興味を持ってくださり、それが野菜を好きになってもらえるきっかけであれば、とても素敵なことですから。私の中で、野菜は農作物全般を意味します。例えば、元は木に成る果実である珈琲も、菌類の椎茸も。植物の皮も茎も種もつるも実も、根っこも豆も…みんな野菜。まだ日本に入って来ない野菜だってたくさんあります。これからどんな野菜に出会えるのか、それをどんな形で皆さんに紹介できるのか、それを考えるとワクワクします。

 

 

 

 

 

 

読者へのメッセージ

 

野菜ソムリエ 天野友江さん

31歳で結婚。35歳で資格を取り、39歳で起業し、現在40歳。今がすごく楽しいんです。

 

将来に悩む若い方に「いつが一番楽しかった?」と聞かれることがよくあります。大概のオトナは学生時代や独身時代と答えるそう。でも私はいつ聞かれても「今」と答えます。楽観的なのでしょうね。我ながら幸せものだなぁと思います(笑)
これからの夢に向けて今は種まきの時期。人生80年!私だってまだまだこれからですからね。ありがたいことに周りにはキラキラしている年上の女性がたくさんいるんです。これは刺激になりますね。私が若い方にとってのそんな存在になれたら、こんなに嬉しいことはないですね。10年後の自分が何をしているのか。そのために今何をするのか。興味を持ったら、まず関わってみることから始めてほしいと思います。

 

 

 

 

 

 

 

天野さんにとって、野菜ソムリエとは?

月並みな言葉かもしれませんが、「天職」です。
この仕事に関わるようになってから、知ることや伝えることの楽しさを実感することができました。自分が感動したことを伝える喜びというか、野菜のいろんな側面を知ってもらえる喜びというか…。自分の適性を教えてくれたのが野菜ソムリエです。活動の軸は、「楽しい食卓のお手伝い」「畑と食卓をつなぐ架け橋」としていかにその魅力を伝えるかということです。これからもずっと、軸をぶらさず活動していたいですね。

 

 

 

 

野菜ソムリエ 天野友江さん

 


 


 

 

PROFILE

野菜ソムリエ 天野友江(あまのともえ)さん

1973年静岡県生まれ。手作りにこだわる母の影響、自分が作ったちらし寿司を父が目を細めて褒めてくれたことで、料理は人を幸せにすることを知る。のちに東京で食やコミュニケーションについて学ぶ。結婚後は料理に腕を振るう毎日を過ごす。バイト先のカフェで野菜ソムリエの存在を知り、2008年ジュニア野菜ソムリエ、2011年には、念願の野菜ソムリエの資格を取得し、野菜ソムリエベジフルキューピットを設立。2012年6月には野菜ソムリエ協会認定 野菜ソムリエコミュニティ静岡の第三代会長に就任し、レシピ開発、オトナ向け食育講座、お料理教室、フルーツカービングなど、野菜・果物を美味しく楽しく食べるお手伝いや生産者と生活者の架け橋として全国に活躍の幅を広げている。テレビ静岡「てっぺん静岡」木曜レギュラーとしても活躍中。

 



ベジフルキューピット公式サイト http://vegefrucupid.i-ra.jp/

取材協力/圡井ファーム http://www.doi-farm.com/