スペシャリストインタビューVol.32 模型作家 木谷真人さん


実際のものよりも実物に近く見えるように努力を惜しまない木谷さん。

作る側が楽しんで作っているからお客様にも楽しさが伝わるコミュニケーションツール、
それが模型だと教えてくれました。

 

 

 

クリエイターとしての現在の活動を教えて下さい 。 

模型作家 木谷真人さん

ミニチュアモデルカー・プラモデルを作っている会社を経営しています。

企画から設計までを私が行い、中国で製作しています。

中国での生産スケジュール・品質管理の打ち合わせなどで中国を訪れることが多いですね。

 

 

 

 

 

ミニチュアモデルカーを始めたきっかけは? ?

模型作家 木谷真人さん

 作りたいものを作りたかったからです。
大きな会社では採算があわないものを作ることはなかなかできません。
私には作りたいものがたくさんあったんです。
当時、日本の車のミニチュアモデルカーがほとんどなく、それまでなかった1/43サイズの精巧に作ったモデル作りをやってみたかったんです。当初の目的は歴史に残すべき日本の車100種類を作ろうという意気込みで始めました。現在2,000台ほど作ってきましたね。でもまだ作りたいものがあるから幸せですね。

 これは模型にしたいなと思うものは作るし、古い車も掘り起こして作ります。
自分が作りたいものは外せないですね。

EBBROギャラリー

そして、日本にこだわりをもっています。

わずか50年ほどで車がこれだけポピュラーになって、生活の一部になったにも関わらず、残すことをあまりしません。

せめてミニチュアモデルカーで残したかったんです。

モデルチェンジがあると、どれを残すべきかすごく考えますね。

 

 

 

 

印象に残る出逢いを教えて下さい。 

やっぱりタミヤさんにいたことですね。とても感謝しています。普通の会社に居たのではできないことをタミヤさんにいたから経験させてもらいました。おかげで今の自分がこうしてありますからね。切っても切れないですね。

 

 

 

タミヤさんに入ったきっかけは?

 

模型作家 木谷真人さん

模型がもともと好きだったんですね。
子供のころから木に図面を書いて、そこから削り出すこともやっていました。
プラモデルはすごく画期的でしたね。
タミヤさんのHONDA-F1ができた時に、その出来栄えにあまりにもショックで、ここで仕事をしようと決め、高校を卒業する時にタミヤさんに手紙を書きました。会社見学に呼ばれ、そのまま就職しました。
熱意が伝わったんだと思いたいのですが、北海道から来た時点でしょうがないなあ、と思ったんじゃないでしょうかね 。

 

 

 

 

クリエイターとしてのこだわり、大切にしているものを教えてください。

模型作家 木谷真人さん

小さくなっても実車以上にかっこよく見えるかということですね。三次元的なものの見せ方・表現にとてもこだわっています。

昔は二次元の図面を描いて、木型やさんに削ってもらって、やりとりをして・・・
木型ができるまではとても不安でした。
少なくても50-60点、200点以上のパーツの設計図を書くこともあります。

実車を見て、そこからパーツの図面を起こすんです。1/1の時に見えるものが1/43になると見えなくなるものもあるんですよ。ここを膨らませようとか、もっと張りをつけようという作業を繰り返します。

昔は自動車メーカーから図面はもらえませんでしたから、1からすべて図面を起こしていましたね。でも今は三次元CADを使って画面でわかりますからね。楽になりましたけどね。

それでも納得のいかないバランスがあるんですよ。
時間をかけて、満足するまで作りますが、作り直すことも多いですよ。
古い車の場合、わからないままスタートしてしまうこともあって、そのわからない部分がわかるまで停止しているものもあります。そういう時は仲間が資料を探してくれたりして再度進めることが出来るのです。
パッケージを絵にしているものは、当時の雰囲気を出したい時にタミヤ時代に出逢った方に依頼して描いてもらっています。タミヤ時代からのおつきあいの方とのご縁が今も生きています。

 

 

 

 

プラモデルを作り始めたそうですね。

模型作家 木谷真人さん

プラモデルは「かっこいいな、これ作ってみたいな」と思われなければ意味がないんです。

タミヤ時代には、車・バイク・戦車など、ありとあらゆるものをやりました。
フィギュアを作ることもありましたよ。
馬のフィギュアを作るために、馬の生態から勉強しましたよ。写真1枚で作るのではなく、きっちり勉強してからというくせをタミヤさんで学びました。
実際のものよりも実物に近く見えるように作っていくんです。
1台作り上げるのには、半年くらいかかります。昔は1年はかかりましたね。
時代と共に早くなってきましたね。データ上でできてしまうことが多くなりました。
自分だけのプラモデルを作り上げる楽しみ、喜びを感じてほしいですね。

 

 

 

 

 

夢を教えてください。

 

模型作家 木谷真人さん

会社をもっと安定させることですね。中国の工場ですから、その時の円の価値に左右されます。

 

日本の工場で作る方がいいのかなと思っています。中国に固執することはないかもしれないですね。 それから模型というものをもっと多くの方に楽しんでほしいですね。売れる売れないということではなく、楽しいものだということを知っていただきたいですね。それはひとりの力ではできないんですけどね。いろんな場面でそういったことを発信していけるようになりたいですね。

 

 

 

 

読者へのメッセージ

私は今年63歳になるんですけど、模型を作りたい人がいたら場は提供しますのでいらしてください。一緒にやりましょう。モノづくりの部分を手伝ってくれたらいいなと思っています。簡単なことではありませんが、そういった志がある方がいらっしゃったら一緒にやりたいですね 。

 

 

 

 

木谷さんにとって模型とは ?

商品になるまでの過程を楽しめるもの。

作る側が楽しんで作っているからお客様にも楽しさが伝わる「お客様とコミュニケーションできるツール」ですね。
そしていつも刺激を与えてくれるものです。

 

 

 

模型作家 木谷真人さん

 


 


 

 

PROFILE

模型作家 木谷真人(きやまこと)さん

北海道稚内出身。田宮模型に入社し、金型の製造・制作に携わる。その後、長年設計に携わり、企画なども担当。また取材・メーカーとの交渉、レースチームとの交渉までも経験。30年の勤務ののち、その経験を生かし、自分の好きなものを作るため、1998年に有限会社MMP(ミニチュア・モデル・プランニング)を立ち上げ、EBBROブランドを創り上げる。設計からパッケージまで、すべてを自らが担当している。2010年8月、ビッグコミックに「クルマ馬鹿 スーパースター烈伝~第4伝 模型の国の王-木谷 真人」が特集され、模型業界のパイオニアとして現在も業界をリードしている。

 



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