スペシャリストインタビューVol.31 あまるさん

静岡大学でサークルに入ったことがきっかけで、多くの人に笑顔を届ける大道芸人になったあまるさん。

「場を預かって場を創る」「住んでいる街に自分が見たい風景を創りたい」
そう語る彼の笑顔の向こうに見えた真剣なまなざし。

夢を追いかけることがこんなにも美しいのか、と改めて感じさせてくれました。

笑顔を想像して、ひとつのストーリーに仕立上げるから、生き生きとしたパフォーマンスになるのだそう。

 

 

大道芸人としての 現在の活動を教えて下さい。 

あまるさん

主にいろいろなお祭りやイベントでステージを預けていただいて、そこでパフォーマンスショーをしています。

 

また、活動している中で芸人を含めいろんな人と知り合うので、彼らを集めて自分たちで創ったイベントを開催しています。
賑わいづくりの活動です。
大道芸を軸とした縁日イベントですね。
縁日イベントには、屋台の人、おもちゃを作ったりして遊びを教えるワークを持っている人を誘って、一緒に場創りをしています。

かかる費用の元を取るというのではなく、お祭りや町を一時的に預かるという責任を全うする、あるいはそれ以上の期待を上回る形ができれば、ちゃんと返ってきます。

お祭りづくりに関わっているからには、お金ありきで動かないように心掛けています。
やるべきことをやったあとに頂けるものがあれば、それが来年への糧になりますね。
街を活性化する気持ちというか、まずは自分自身が住んでいる街で、自分自身が見たい風景を創ることをめざしています。

 

 

 

 

大道芸を始めたきっかけは?

あまるさん

 静岡大学時代に大道芸サークル「ワップス」に入ったのがきっかけですね。
お手玉がたまたまできたこと、そして技を覚えるのも好きだったので入りました。
入って2週間でお祭りがあったんです。
そこに出演することになって、できないながらもお手玉とけん玉をやらせてもらいました。
デビューですね。
目の前でやったことに対してリアクションがあるのが面白かったです。最初は女子中学生4人に「下手くそー」と冷やかされながらでした。
決定的な動機があったわけではないんですよね。

ただ、振り返ってみると、子どものころからウケを狙うのが好きだったんです。
例えば作文を読むというモノづくりに関して、羽目をはずす読み方をしたり、ちょいちょい自己主張していましたね。
ひねくれている自分、ウケを狙ってもいい自分を受け入れてくれる。そういうのが大道芸の場合はダイレクトなんですよ。やったことに対して、その場でリアクションがいただけるんですから。

 

 

 

印象に残る出逢いを教えて下さい。 

あまるさん

お祭りに関わっていくおもしろさを教えてくれた旅回りの芸人さん「おいかどいちろうさん」です。

 

旅をされていない時は、自分の住んでいる街でお祭りを創って、おはよう運動をしたり、子供たちを巻き込んで芸を仕込み、子ども演芸団を創って披露したり。そして食べ物や飲み物を持ち寄らせてお祭りを創ってしまうんです。
彼が創るお祭りの魅力「ひとりひとりが個性を出し合っていること」にショックを受けましたね。
ショーだけで終わらない、いろんな人が集まるきっかけになる場を創りだすヒントをくださった方ですね。

またデビューの時、酔っ払った一人のお兄さんが自分の芸を盛り上げてくれて、へたくそな私の芸に1000円出してくれて、「じゃあね。」と帰って行きました。
そして、その方と1年後の大道芸の時に再会。覚えていてくれたんです。
そのお兄さんが応援してくれていなかったら、もしかしたら今はやってなかったかもしれませんね。たぶん最初の一歩としてはそこで味をしめちゃったんでしょうね。

 

 

 

 

大道芸人としてのこだわり、大切にしているものを教えてください。     

あまるさん

テクニックを磨くことと、体力づくりは大前提、当たり前のことです。例えばジャグリングは3時間続けて黙々とやります。

 

むしろ大道芸を使って、何かのきっかけになるものを創っていかなくてはいけないと思っています。

大道芸は本来は巡業スタイル。
でも僕がやっているのは一か所に居座って同じ街や地域の方々に見てもらうスタイル。でも同じ人だと新鮮味や次の期待感や好奇心をあおれないんです。
とにかく演目を増やして、毎回常に新鮮に心を打つものをやっていきたいです。
そんな中でも真骨頂というものも見せていきたいですね。
再度訪れる会場では少なくとも必ず1個、新しいものを入れていかなくてはならないと思っています。

もちろん新しい演目は自分で考えます。いろんな人やものを観察しながら、おひとり、おひとりの持っているドラマを自分の都合のいいように持ち帰ることもあります。
ドラマ(物語)をコメディーに仕立てて観客の方と共有するショーをよくやっています。
軸にしているのはコメディーで、その中でジャグリングや風船、パントマイム、ファイヤーショーを盛り込んで常に新しいショーが生まれるように工夫しています。

 

 

 

 

夢を教えてください

静岡浅間神社の春の例大祭「廿日会祭」の中で準備させていただいている芝居小屋シアターがあるんですが、こういう劇場を商店街の中で常駐させたいと思っています。

それが一番大きな夢ですね。
全国で、世界で・・・自分が飛び込んだ先々で知り合ったおもしろい人に毎週静岡に遊びに来てもらうんです。「お客様」と「宿舎」を用意するというやり方で。

劇場という機能を持ちながら、日中は子供の遊び場にしたいんですよ。
自分の場合は縁日の遊びやジャグリングを教えることをしていきたいです。
人がいろんなものを持ち寄って自然と人が集まる場所を創るのが夢です。

子どもたちのいる風景のひとつにこういう場所があるということを伝えていきたいんです。
みなさんがつながる場所やモノを創っていきたいですね。

この夢は人生の先輩方にもよく話します。それは話せば実現すると思っているから。
アドバイスもいただきます。
商店街の個人商店主として後輩世代に関わりを持っていきたいんです。

 

 

 

読者へのメッセージ

あまるさん

私が大道芸にのめりこんでいったきっかけは、やったことに対して喜んでくれる人がいるということなんです。
その向こうに喜んでくれる人がいるという想像を広げて取り組めば、どんなに難しくても、自分に合わないかなと思っても、きっとどんなことも楽しく、ステップアップもできるんじゃないかなあ。
飛躍した想像をするとワクワクすることができると思います。

あとは自分が楽しみながらやることと、続けていく工夫ですね。そういったモチベーションは大切だと思います。

 

 

 

 

あまるさんにとって大道芸とは?

人がスペシャルな人と向き合って一緒に作っていくものですね。大道芸ってそんなに大きなものではなく、本当にきっかけなんだと思っています。場所を創るために必要なひとつのポジションですね。やっぱり直接的ですから、それを見て、いい!と思ってくれて広がっていけば嬉しいですね。そして巻き込みたくなってしまうもの。ノッテル人、あと一押しで踏み込めそうな人をキャッチしていきます。お客様を主役に!そういう生々しさが盛り上がる理由なんです。物語仕立てのコメディーショーに、お客様を巻き込むことは不可欠です。お客様と物語を創る、それが私の大道芸です。人と人が交わるきっかけになるものですね。

 

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PROFILE

大道芸人 あまるさん(餘目哲 あまるめ さとし)さん

1978年岩手県生まれ。群馬県に住み、1999年に静岡大学に進学し、大道芸歴は14年目を迎える。曲芸や奇術、コメディ寸劇をメインに大ステージからホームパーティーまで大小問わず全国各地のイベント、フェスティバルで活躍中。

 

2001年三重県鈴鹿サーキット大道芸コンテストでグランプリ獲得、2002年石川県獅子孔高原スカイフェスタにてフェスタ大賞受賞。また2005年から3年間、2011年から現在は、NPOしずおか大道芸のまちをつくる会の代表として、舞台アーティストによる静岡公演や大道芸イベントの実施、文化としての大道芸推進、公演者の紹介および支援、大道芸を軸とした賑わい創りを目指して活動を続けている。



ジャグリング コメディ寸劇 バラエティショー大道芸人『あまる』
公式サイトhttp://www.amarulabo.com/