岡本光市さんスペシャリストインタビュー

少年の心を持ったまま、今も作品を作り続ける岡本さん。
身近なものを別の形にしてしまうアイデアは無限に広がっていく。
こだわらないというこだわりが、アッと言わせる作品を生み出し続けている。
その自由な発想が人々の心を動かすのだろう。

 

 

デザイナーとしての現在の活動 は? 

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様々な素材の性質や、機械部品 装置など、元々あるものを自分なりにリメイクする形で、作品と量産品と分けて作っています。量産品は企画・製作・梱包から出荷、流通まで自分達で行う自給自足的なデザインブランドを手掛けています。

展示会はニューヨーク、フランス、スウェーデン、東京、韓国、台湾、中国、オーストラリア、ロンドン、ドイツ、オランダ、ロシア、ロサンゼルスなどで行っています。数年前まではほとんど量産品ばかりだったのですが、ここ数年は一点ものなどの作品に力を入れています。

 

 

 

 

プロダクトデザインを始めたきっかけは?

もともとミニマルテクノというジャンルの音楽をやっていました。色々な国にデモテープを送って、リリースが決まったのがオランダのテクノレーベル“X-Trax”。レコーディングで行く度に様々なアーティストとの出逢いがあって、モノづくりについての話がその後の自分に大きく影響しています。

子供のころからモノを作ることや絵を描くことが好きでしたから、共感する部分が多かったですね。当時作品を売ることは考えたことがなかったのですが、アーティスト達がモノづくりをしているのを見ているうちに刺激を受け、独学で学び始め、2004年に初の量産品であるバルーンランプを発表し、2006年に共栄designを起業しました。当時も今も、子供の頃と何にも変わっていないですね。あっと驚いてもらえるような作品をつくりたいですね。

 

 

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印象に残る出逢いを教えて下さい 。 

岡本光市さん

ひとりはオランダに行くきっかけとなったレコード会社“X-Trax”のオーナー「DJMisjah」。彼が僕を見い出してくれたことがその後の自分の道を決めるきっかけになりました。 “X-Trax”は当時の僕らの中では神様的な存在で、そこからリリースできたことはすごく嬉しかったですね。年に1枚ずつリリースしました。海外に行くきっかけにもなったし、そこでオランダのアーティスト達と知り合ったりとダッチデザインに触れるきっかけを作ってくれましたね。

もうひとりはイタリアのデザインブログ「designboom」(http://www.designboom.com/)のBirgitという女性チーフ。彼女が僕を取り上げてくれたことで、デザイン業界で広がるきっかけを与えてくれました。彼らとは今でももちろん交流がありますし、アドバイスもくれるんですよ。Birgitにはよく怒られるんですけどね。

 

 

 

 

デザイナーとしてのこだわり、大切にしているものを教えてください。

 

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「デザイナーとしての意識をしないこと」がこだわりかな。

あまりデザインという枠にこだわらず、そこからはみ出た部分に意識を置いて、全然違うものをミックスすることによって新しいものが生まれる気がします。デザインを学んでいないからこそ、そういう風にこだわらないようにするべきという気持ちが強いですね。

 

 

 

 

 

夢を教えて下さい。

 

岡本光市さん

今まで何かこうなりたいと思ってうまく行った試しがないんです。

 

今こういう事をしていること自体、数年前ではまったく想像がつきませんでしたし、 音楽もリリースが決まった時には、やっと報われた!と思ったのに、全然食べていけないんですよ。僕のトラックは曲というよりは音だけなので、マニアックすぎてコアな層にしか支持されなかったです。 数年間踏ん張りましたがどうもうまくいかない、、どこかで諦めなければいけない、と音楽を1回諦めました。でもすぐに次にやりたいことは何だろうか、と考えた時に、やっぱり何かを作ることしかできなかったんです。形の無い音から形のある作品を作り、それを販売してみようと思いました。 そして今、一度は諦めた音もデザインに取り入れることで活かされています。 こうなりたいと思ってやったというのではなく、続けていくことでお話いただいたり、次の目標が見えて来たりしました。 自分がやれることをやってみて、思ってもいない展開があり、その道へ進むことが自然のような気がします。 諦める勇気や変化する勇気が必要な時があるのかな、と思います。何かを作っている時は本当に楽しくてたまりません、でも生み出すまでが辛い事でもありますし進化もしなければつまらない。 自分らしい作品とは何なのだろうとか、もっとオリジナリティを追求しなくてはと思います。 共栄designを立ち上げてから今日までの時間より、どうして自分は音楽とか芸術とか、お金にならないことしか好きになれないのだろうと悶々と考えている時間の方が長かった分、今はどんどん新しい表現や手法にチャレンジしたいですね。

 

 

 

読者へのメッセージ

好きなことでも頑張り過ぎて嫌になってしまうことがあると思うんです。

60%位の力で長くやって行ける事を習慣にし、ここぞという時にベストをつくす。そうすることで仕事という感覚ではない、生活の一部になってくれるような気がします。何かを生み出すというのはストレスを適度に抑えつつ、でも悶々とすることだと思います。皆さんも悶々としてください。

 

 

 

岡本さんにとってデザインとは?

 

僕にとっては、ご飯を食べる、呼吸をするのと同じ感覚で、特別な感じがあまり無いです。

20代は、仕事もろくに就かずに引きこもりニートみたいなことをやっていました。家でずっと音楽や絵を描く日々が何年間も続き、機材や絵を描く道具が欲しい時だけアルバイトして、手に入れたらすぐ辞め、またどっぷりその世界に浸かって、という生活でした。何かを作り出すことは、唯一子供のころから今までやって来れた事で、何かを作ることしかできなかった結果です。

 

 

 

 

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PROFILE

岡本 光市  おかもとこういち

1997年、オランダのテクノレーベル“X-Trax”よりアナログレコードリリース。2006年、プロダクトブランド共栄デザインを設立。静岡県立美術館にて個展「twodays and four products」を開催。共栄designの製品は30カ国以上のデザインブランド、ショップ、美術館などで扱われ、2010年には、イスラエルmuseumholonのオープニング・エキシビジョン「state of things」に選出。2010年・2011年にSan Francisco Museum ofModern Artにてglass tankがパーマネントコレクションに選出。ブラジルで開催されたコンテンポラリーカルチャー「NOVA」の100人のアーティストに選出され、アートと音楽、デザインを横断するデザイナーとして活躍している。2012年には東京銀座のPOLAMUSEUM ANNNEXにて個展を開催、同年ロンドンV&Aにて展示ライブパフォーマンスを行う。

 

 

 

musical table&pendulum sound machine live at pola museum annex from kyouei design on Vimeo.



共栄デザイン http://www.kyouei-ltd.co.jp/