Jリーグ清水エスパルスチアリーダー『オレンジウェーブ』 アドバイザー羽柴 多賀子(はしば たかこ)さんにインタビューしました。


今や習い事人気ランキングでも上位に登場するようになった「チアリーディング」。女の子が憧れるスポーツとして確立してきました。日本でチアの歴史を作ってきたのは、今回インタビューさせていただいた羽柴さん、その人です。「とにかく楽しい!こんな楽しく学べるってなんて素晴らしいのだろう!」彼女が初めて本場アメリカでチアと出会った時に、そう感じたのだそうです。キラキラと輝く笑顔がとても印象的でした。 

 


エスパルスオレンジウェーブでの現在の活動を教えてください 。

Jリーグ清水エスパルスチアリーダー『オレンジウェーブ』 アドバイザー羽柴多賀子さん

私は今シーズンよりアドバイザーになりました。創生期から11年、ディレクターとしてみんなと一緒にやってきましたが、後輩が育ちましたから、彼女たちがディレクターとなり、私はアドバイザーとなってサポートをしていきます。清水エスパルスがフォーエバーなようにオレンジウェーブもそうでなくてはいけない。私がいなくても存在しなくてはいけない。たすきを渡していくことが必要だと思って、今シーズンから現場を離れて見守る立場になりました。アカデミーのスクールでは、監督をする立場なので、インストラクターの養成は今後も引き続きやっていきます。オレンジウェーブでは5名のインストラクターが誕生しているんですよ。

 

 

 

 

チアの世界に入ったのはいつ?きっかけは??

Jリーグ清水エスパルスチアリーダー『オレンジウェーブ』 アドバイザー羽柴多賀子さん

もともと高校の時にバトン部だったんです。野球の応援で知らない人と肩を組んで応援歌を歌ったり、自分の学校の友達や野球部を応援することがすごく楽しかったんです。卒業後、バトンを指導するようになりました。当時アメリカのチアダンスなどが日本に入ってきて、メディアにも取り上げられるようになっていました。生徒から「私たち、ああいうのをやってみたい」と言われ、ポンポンを持って踊ることをごまかしながらやっていたんです。その後バトンの世界大会のコーチとしてアメリカに行った時、チアリーディング指導・育成を行っているアメリカの団体USA(United Spirit Association)のサマーキャンプを受けてみないか、というお話をいただき、大学の施設での3泊4日のキャンプを3つ受けました。「これが本物かあ、これは楽しいかも!」と強烈に思いましたね。バトンは一人で黙々とやって本番でバトンを落とすかもしれないという、メンタル的にリスクが高いスポーツ。ところが本場のチアは、とにかく楽しい!「もっとできるよー。」「ほらーできたー。」とか。発表の時も「Good Job!」と言ってくれる。こんなに楽しく学べることって素晴らしいなと思ったのがきっかけですね。 ちょうどその時にUSAの日本支部ができることになって、日本でインストラクターのオーディションを受けました。アメリカにキャンプに行った時にインストラクターになるオーディション用紙をたまたまもらえちゃったんですね。日本での事情もあり、アメリカのオーディションは受けられなかったので、日本支部ができるなら、と受けたんです。 チアはとにかく楽しくて、技術だけを追いかけていくものではなく、周りを巻き込みながらスピリットを伝えていく、というところに魅せられてしまったんです。

 

 

 

 

オレンジウェーブの活動の中で、印象に残る出逢いは?

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もちろん、メンバーの子たちとの出逢いは一期一会です。もともと地元の高校で教えていた子たちが卒業して競技を終えた時に、次のステップの選択肢のひとつとして仕事をしながらでも自分を磨き続けて、自分が立てる場所を作ってあげたいと思って、チームを作りました。そして、プロスポーツに入ろうと、地元のエスパルスに相談に行きました。「よし、やってみようよ」とおっしゃってくださった当時の方々との出逢いは一番最初の大事なものですね。シーズンの途中だったので、夏からシーズン終わりまで全試合を踊らせていただきました。その間に色々な話をさせていただいて、来シーズンからオフィシャルなチームとしてやりませんか、ということになったんです。そうやって受け入れていただかなければできませんでした。本当にありがたく思っています。 そして、毎年オーディションに来る子たち、ひとりひとりとの出逢いも大切ですね。もちろん、スタジアムに行くたびに、サポーターさんたちとの出逢いもありますし、イベントの時にお声掛けいただくサポーターの方たちとの出逢いは、本当に大切にしています。みなさん温かく交流してくださるのでありがたいですね。みなさんに応援していただいております。 最近では横浜F・マリノスさんとお互いのスタジアムで一緒にハーフタイムの時に共演しました。お互いにエールを送り合って一緒に演技をするんですよ。試合はガチンコ勝負なのだけど、交流をしながらお互いにJリーグを盛り上げていこうという気持ちは同じですね。


 

 

 

 

チアを教える上で大切にしていることは?


Jリーグ清水エスパルスチアリーダー『オレンジウェーブ』 アドバイザー羽柴多賀子さん

チアのチームは、学校であったり、クラブのチームであったりという何か応援するものがあるから存在するんですね。それが、普通のスポーツとは違う存在の形。アメリカで、そこのスピリットを伝えるためのチームだと教わりました。学校やチームの創立のスピリットや理念を伝えるためにチアリーダーはいる。そこを一番大事にしていきたいですね。女の子が人前に立って何かを発信できる、リーダーシップを育てられるようにする、スピリットを伝える、というのが他のジャンルのダンスと違うところ だと思います。だから、人前できちんと挨拶や話ができること、笑顔をたやさないこと。ダンス力よりもそこを一番大切にして子供たちやトップチームを指導しています。それが一番忘れてはいけないことだと思っています。 私は貢献という言葉を大切にしています。チームのことが大事で、そこに自分がいたいのであれば、チームのために何ができるのかを損得でなく考えようよ、と伝えています。例えばごみが落ちていたら拾ったり、「ありがとう」ときちんと言えたり。気づいて、さりげなくやるってこと、それがチアのやることだよ、って。そういうことができないと人前には立てないということなんです。それができて初めて踊りで何かを伝えることができるんです。だから、トップチームのオーディションでは、踊りの出来ではなく、その子の姿勢やハートを見させていただいています。

 

 

 

 

オレンジウェーブでの11年を教えてください。

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プロのチアリーダーとは プロのチームに所属するチームであるということです。日本の中にプロのチアリーダーとして、生活をしている人はいませんね。現役で踊っていて生活できている人はアメリカにもいないでしょうね。彼女たちも仕事をしながら、続けているんですよね。街の誇りであるプロのスポーツチームのチアリーダーであることは最高のステイタス。そのくらい存在価値があって、誇りであるのがチアリーダーなんです。だからオレンジウェーブも自分の育った街のプロのスポーツチームのチアであることが誇りなんです。厳しいことを言われても、ピッチに立てるのは選手とパルちゃんとオレンジウェーブだけ。選ばれし者なんですよ。「それを感じてごらん。客席からそれを客観的に見た時のことを考えてごらん。どういう風にしたらいいと思う?」ということを11年投げ続けてきましたね。 パルちゃんにも企画してくださる方たちにも、ここはこうあるべきじゃないか、と教えていただきました。私自身が一番変わったんじゃないかな?私はアメリカで勉強し、チャンピオンチームを育てて、と自負するものはいっぱいありましたけれども、実際自分がディレクターとしてプロでのチームを創り上げていく、しかもサッカーというチアが存在しないところからのスタートでしたので、試行錯誤しながら、模索しながらやってきました。失敗ももちろんありました。その時の女の子たちの振る舞いや声のかけ方なんですよね。控室でメンバーと号泣したこともありましたけど、「でもやろう!変えていこうよ!」と。すごく勉強になりますね。理念を聞きながら、私たちもそれに沿うことが必要なんだと。技術でないことを学ぶことが多かったですね。対戦相手によって、試合の状況に応じて、気持ちを切り替えてやっていますね。 フィールドは自分たちのためにあるのではない。誰のために立っているのかを思っていなくてはならない。選手はサポーターの方のもので、それをサポートをするのが私たち。それは一番肝に銘じなくてはいけないことですね。

 

 

 

 

これからの夢を教えてください。

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チアというスポーツが日本中に広まっていったらいいな。習い事の中で少しずつ人気が出てきて、毎年人口も増えています。その子たちがチアを続けるいろんな出口が見つかるとか、そのひとつがエスパルス・オレンジウェーブとか、いろんな人に楽しんでもらえる現場がたくさん出てくるといいな。 チアには世界大会があったり、世界のトップチームを決めるようなしのぎを削る大会もあります。そういうところに出ていけるような人を育てていきたいですね。そしてチアを楽しんで、もっとプロスポーツがチアを持って、その価値観を見いだせる、価値観を伝えていける指導者を育てていきたいですね。 静岡中の人たちがオレンジウェーブに入りたいと思ってくださるようなチームにしていきたいし、私が消えてなくなっても存続してほしいと思います。そこからまた何かが生まれてくる、と思っています。女の子たちが輝く現場、女の子が笑顔で世界に羽ばたけるスポーツは数少なくて、人々に見て楽しんでいただけて女の子が輝ける場所がオレンジウェーブになればいいな。

 

 

 

 

「ならいごと.jp」の読者へのメッセージ 

 

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一歩踏み出すことは何にでも大切で、踏み出さない限りは何も始まらない。とにかく私は、いつも前進!「3歩進んで2歩下がる」でいいから前進!でも前に進む。立ち止まってもいいけれど、前を向いていれば何かが始まる。それでも前に進んでいれば、きっと何かが始まるし、どこかにたどり着けると思っている。何かやりたいと思った時はそれは自分の旬ですから、チャレンジしてほしいなあと思いますね。

 

 

 

 

羽柴さんにとってチアとは?

いろいろ自分を成長するきっかけを与えてくれるもの。人と人とをつなげてくれて、いろんな方とお話させていただくのもチアを通じてですからね。世界大会の審査もさせていただいているのですが、英語はあまり得意ではなくてもチアという共通の言語があるとそれで楽しむことができて、かたことでもやり取りができるんです。こどもたちに教わることも気づかされることもまだまだたくさんあります。チアは自分を成長させてくれる大事なものですね。

 

Jリーグ清水エスパルスチアリーダー『オレンジウェーブ』 アドバイザー羽柴多賀子さん

 

 

 

 

PROFILE

羽柴 多賀子  はしばたかこ

東京都出身。高校時代はバトン部で活躍。卒業後チアリーディングと出会い、本場米国で学ぶ。帰国後、高校や企業チーム等を指導しつつ、米国カリフォルニア州に本部を置くUSA(United Spirit Association)日本支部のディレクターに就任。現在は、同日本支部の代表としてチア普及に尽力。1990年から、数々のトップレベルチームを指導。プレーヤーはもちろん、優秀な指導者も多数輩出している。2002年より清水エスパルス公式チアリーダー「オレンジウェーブ」ディレクターとして活躍の場を広げる。現在はアドバイザーとしてチームを育成している。

 


Jリーグ清水エスパルスチアリーダー『オレンジウェーブ』 
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