人形作家 大高輝美さんにインタビューしました。

「ありのまま…それが一番いいの」1970年代以降、日本中の女の子が夢中になって作った「フエルトで作る人形」の生みの親である大高さんは、何度もその言葉を繰り返します。一世を風靡した彼女のやさしい語り口や、まるで少女のような素直でまっすぐな澄んだ目が、そのすべてを語っているようでした。自然体でありたいという想いが強いからこそ、心の移り変わりが作品の大きさや表情にはっきりと映し出されていました。

 

人形作家になったきっかけは?

人形作家 大高輝美さん

考えることや工夫するのが好きで、小学校3年生の頃には要らないお布団でライオンのクッションを作ったり。フエルトで小さな動物を作るのも好きだったわ。自分のお部屋の中はきれいでかわいい方がいいもの。寒くて蛍光灯のひもを引っ張るのが嫌で、帽子をかぶったどじょうを作ったりしたわね。いつしか子どもたちに夢を与える世界を表現するために絵本作家になる夢を持つようになって、画家の先生のおうちにお世話になったの。その時に先生が私の作品を見て「おもしろいから人形作家でやってみたら?」って。それが始まりよ。

 

 

 

 

現在の主な活動と、これからの夢を教えてください。

人形作家 大高輝美さんの作品

静岡の朝日テレビカルチャー講師、横浜のレッスンに加えて、自宅でも1日講座を開いているの。もちろん、作家活動もしているわよ。
今は、本の仕事はしていないけど、自分を見つめるために作り始めた仏像の作品集を1冊の本として出したいと思っているわ。自分自身を見つめた世界がどんなだったか、それが表現できる本を出したいの。
あとね、「ぞうりむしのうた」っていう絵本を出したいな。ぞうりむしって見えないじゃない?でもそこにものすごい大切なものがあることに気づかない。それを楽しい画面の中で表したいなあって思ってる。
その本は、描きたいなあ。

 

 

 

出版された本についてのエピソードをお聞かせください。

ミリオンセラーになった本たち

全部で30冊ぐらい出版されているみたい。だけど覚えてないの。何冊かはミリオンセラーになったけど、もうそれも過去のことね。制作はね、1冊まるごと頼まれると、表紙から裏表紙まで全部任せてもらえたわけ。ある方の批判があったんだけど、そのまま出版されて、結果すっごい売れたの。その方は、「自分のものさしで図ったことばかり考えていたけど、この本で変わった。 自分の尺度でものごとを図っちゃいけない」って言ってくれて。それからね、おむすびに顔があったりするのはその頃なかったんだって。でもね、みんな人格あるって思うからそんな風にして遊んでたんだろうな。自分の心の内側にある遊び心が想像力につながるでしょ?きっとそれが得意だったのね。優等生じゃなかったのがよかったのね。当時は画期的だったみたい。

 

 

 

当時の子どもたちとの関わりは?

今でも大切にきれいに保存されています。

ファンレターは段ボールで来るの。最初のうちはお返事を書いたけど、全部書ききれないの。アシスタントさんたちに全部読んでもらって、お返事を書ける部分は書いたんだけどね。ずっとアトリエにこもっていたからね。でもね、毎月届く子供たちが作ってくれた作品はとっても素敵で、「今月の1等賞」を決めて壁に飾ってたのよ。

 

 

 

 

 

 

人形作家としてのこだわりは?

人形作家 大高輝美さん

そのまんまだと思うの。みんなそうだと思うよ。絵描きさんもものづくりの人も、その人そのものだと思う。私は職人的な生き方が好きで、なんでもコツコツと努力したらだんだん上手になるって口だから、本なんかを出すと派手に見えるけど、地味なのよ。生き方もね。でも出てくるものは明るいかな。そして人の作品を見ない。美術館行ったり作品展は行くけれども、出版物でおなじようなお人形さんの作品は見ない。そのまんま受け取っちゃうと、自分の作品もそのまんまになちゃうから。

 

 

 

 

作風が移り変わっていきますね。

作風は変わっていきます。

自分の中にあった想いを全部本に吐き出したあと、ぺっちゃんこになっちゃったの。だからお人形もぺっちゃんこ。がんばったってのが見えちゃっておもしろくなかったんじゃないかな。どんなに忙しくても美術館に行ったり、音楽を聴いたり。。。自分を膨らめることをしていたら良かったんだけど、アトリエにばかりいたからね。それで何年かして作ったのが消え入りそうな小さな小さな和服の人形。これがその時の私。1年間、何も仕事しないで海や山に行ったの。日本平に行った時、おおいぬのふぐりが枯草の中から出てたの。それを見た時にはっとしたのね。毎年枯草の中から出てくるでしょ。自然って強い、人間って弱いって思ったの。野に咲く花の強さを感じてすぐに、お花の刺繍をした着物を着た人形を一気に100体作ってたの。 1年間どっぷりと自然に触れることによって、変わった自分がそこにあったの。そして今では大きなお人形を作っているわ。

 

 

 

「ならいごと.jp」の読者へのメッセージ

ブログも「ありんこのありのまんま」というタイトルなの。ありのままが好きなの。ありのままに見てもらってありのままに言ってくれればいいの。このブログは私のまんまよ。嬉しいことがあったら一緒になって喜んであげられるし、悲しいことも共有できるでしょ?ブログは私が一番出てると思う。なんでもそうだけど、興味を持つって大事ね。頭ごなしにダメっていう人がいるけど、こんな世界があるんだってこと、人と関わることができたり、自分なりに楽しむ方法を見出せたらこんなに楽しいものない。それで今まできたのかも。興味があることは楽しいのよね。それでずーっと来た気がするの。

 

大きな作品が増えてきたそうです。

 

 

 

PROFILE

大高輝美 おおたかてるみ

静岡県生まれ。20代半ばから本格的な人形作品をつくりだす。絵本やコマーシャルの人形製作、雑誌などに作品を発表。フェルト人形で国内外に画期的な手芸ブームを起こし、幅広い年齢層に多くのファンを持つ。「大高輝美のお人形・てるみのおもちゃ箱」「大高輝美のコロコロ人形・てるみの宝もの」「大高輝美のいろいろ人形」「大高輝美・フェルトのマスコット」「大高輝美・フェルトのきせかえ人形」他、30冊以上の著作をもつ。現在静岡市に在住。

 


大高輝美のありんこのありのまんま http://nonisakuhana.blog37.fc2.com/