ドラマセラピスト 中野左知子さんにインタビューしました。

確かに、私たちの多くは「いい人」を演じているようだ。それは様々な人と良好な関係を保つための、他人や自分を傷つけないための、防衛本能なのかもしれない。器用な人ほど演技派俳優だろう。その一方で、演じることが知らないうちにストレスとなり自分の心を擦り減らしている。ドラマセラピーとは、そんな無意識の演技を意識的に行うことで、心の安定を図る心理療法。今回はこの身近なようで聞き慣れないドラマセラピストの中野左知子さんに心を開いて頂いた。 

 

 

ドラマセラピーとは? 

ドラマセラピスト 中野左知子さん

ドラマセラピーは、文字通り演劇を使った心理療法です。人は皆、いい母親いい人など様々な役割を演じて生きています。自分も与えられた役割に適応しようとしますし、相手にもそれを期待します。しかし、役割に縛られすぎてストレスを抱えてしまうことも多いはずです。ドラマセラピーでは、様々な役割を演じることで、自分の幅を広げたり、新しい(あるいは眠っている)役割を見つけ出し、新たな行動を身につけ、心の安定を図ります。

 

 

ドラマセラピーの世界に入るきっかけは?

小さい頃から女優になりたかったので、日本の大学を1年で中退し演劇を学びにイギリスの大学に留学しました。そこで出会った「魂を癒すような演劇」という考え方がはじまりです。商業的な演劇ではなく、人間の精神に深く関わり癒しを与えてくれる演劇。ですが日本にはそんな演劇の考え方はない。日本で実現するのに一番近かったのが「ドラマセラピー」だったのです。イギリス留学後、一時期OLをしていたのですが、夢を捨てきれず、今度はアメリカの大学院で修士課程に進み、ドラマセラピストの資格を取得しました。

 

 

 

現在の主な活動は?

 

ひととひとときでの1枚

アメリカ留学後5年程は、静岡の大学で週4日、学生の心理カウンセラー、週末はドラマセラピーのワークショップというスタイルでした。2005年にドラマセラピストたちと日本ドラマセラピー研究所を設立し、東京や関西で講座やワークショップをしています。私だけ活動の中心が静岡でしたが、最近茅ヶ崎に引越しました。これからも、日本に4人しかいないドラマセラピストと力を合わせて、ドラマセラピーをもっとみんなに知ってもらえるよう頑張りたいですね。

 

 

 

ポーランドにも留学していたそうですが。

ひととひととき講演のようす

数年前カウンセリングの仕事が忙しすぎて体も心も限界、一旦立ち止まらないと大変だぞと感じた時期がありました。その時「魂を癒すような演劇」をもう一度挑戦しようという思いがつのり、私が好きなポーランドの演出家イェジー・グロトフスキの演劇を学ぶために、約2年間ヤゲウォ大学でドラマセラピストとして学生に接しながら、グロトフスキの実践的な演劇トレーニングを受けてきました。この体験は、ドラマセラピストとしてステップアップするのにも大変貴重なものでした。

 

 

 

これまでの人生で心に残る出会いは?

やはりイギリス、アメリカそしてポーランドの先生や師匠たちとの出会いは大きいですね。共通して言えるのは、尊敬するセラピストは心がいつも安定しているということ。何か学生側に不満があり直接批判を受けても、きちんと受け止めてくれます。そして自分に否があれば素直に謝ります。そんな姿を見てきたので、私も自分の否を認められる大人でいたいと思います。そういう考えがあれば、嫌な出来事があっても、それがきっかけで次のステップにつながると思えるはず。自然と感謝の気持ちが湧くでしょう。

 

 

 

中野さんにとってドラマセラピーとは?

ドラマセラピー

ドラマセラピーとは、私をずっと支えてきてくれたものであり、これからも私を導いてくれるものだと考えています。小さい時に女優になりたいと思い続け、留学を決意しました。そして“魂を癒すような演劇”と出会い、さらに留学を経験しドラマセラピーに繋がりました。自分の好きな道を信じて選んで来たからこそ「今の私」があると思います。偶然の出会いもあったかもしれませんが、好きな道だからこそ出会えた偶然だと感じています。

 

 

 

「ならいごと.jp」の読者へのメッセージ

好きなことは、必ず何かを与えてくれます。興味があれば足を運び、まず挑戦。そうしていけば、できることが増え、自分の世界が広がるでしょう。年齢は関係ありません。東京で仕事をして感じることは、みんな年齢に関係なく挑戦しています。私の講座も40代後半以上の人が多く、そういう人はやっぱりステキに見えますね。仕事と家庭以外に自分が自由になれる場所をあることは、生活にメリハリを与えてくれます。静岡の人たちも興味があればどんどん挑戦してもらいたいですね。

 

 

中野左知子さん

 

 

PROFILE

中野左知子 なかのさちこ

ロンドン大学演劇学部在学中から「演劇と癒し」について研究を始める。 2002年にロータリー国際親善奨学生として渡米、カリフォルニア統合研究所(CIIS)でカウンセリング心理学修士課程に進み、ドラマセラピーを学ぶ。2005年から静岡県立大学にて心理カウンセラーとして勤務する傍ら、日本ドラマセラピー研究所を仲間と設立し、日本に4人しかいないドラマセラピストの1人として活動を開始する。2010年よりポーランド最古の大学ヤギュウォ大学にてドラマセラピーを教えながら、ポーランドの演出家グロトフスキの研究を深める。

 

2012年に帰国。独立し、個人カウンセリング・グループセラピーを 行っている。


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