vol.14 木版画家 風鈴丸(ふうりんまる)


「小さい頃から毎日見る夢の世界を、そのまま木版画で表現しているんですよ。」
屈託ない笑顔でそう答える木版画家、風鈴丸さん。
作風通りメルヘンな夢の世界から舞い降りた天使のような彼女は、
伝統や職人によって支えられる伝統木版画の現実の世界で生きていた。
その不思議な組み合わせこそが、彼女独特の世界観を生み出しているのだろう。

 

 

木版画家の仕事は?

風鈴丸さん-画像

私は、伝統木版画という浮世絵画から伝わる技法で「原画を描く、版木を彫る、刷る」を一人でやります。原画描きから刷上がりまでは、2か月半から3か月、大きいものだと半年かかります。だから1年で3~4点しかできません。作りたい作品が山ほどあるのに時間がない体力も続かない。それがすごい欲求不満です。だから最近は、昼間は版画、夜は油絵や水彩画を描いたり、人形作りなどで発散してますね(笑)。版画作りにも、いい刺激になっていると思います。

 


 

風鈴丸さん-画像

木版画家を志したのはいつ頃?

実は、美大の卒業前まで木版画は避けていました。それは父親(木版画家・牧野宗則氏)の存在が大きく、私には無理だと思っていたから。しかし卒業年の学園祭で開く個展の作品づくりで、木版画に挑戦したんです。そしたら「やりたかったのはこれだったんだ!」って電気が流れて、その瞬間に木版画を作り続けようと思いました。父親に相談したら、すごい剣幕で怒られました。プロの木版画家になるとはどういうことか、わかっているのかと。だったら、1年後に自信作を持って帰るから、それを見て判断してほしいと頼んだのです。

 

プロデビューのきっかけは?

1年後に、3つぐらい自信作を持って実家に帰ったら、ちょうど父が画廊の人と打ち合わせ中でした。画廊の人にも見てもらうと、伝統木版画とはまったく違って斬新だったようで、一年であと15作品できるなら個展を開いてくれるって言ってくれました。父も一人の作家として面白い作風だから頑張ってみれば、って後押ししてくれて。風鈴丸という作家名もその日に家族会議で決めちゃったんです。今思うとすごい一日でしたね。それで1年後に個展を開催。それがデビューですかね。

 

特徴的な作風ですが?

小さい頃からほぼ毎日夢を見るんです。その夢は色があって、匂いがあって、味があって、肌触りがあって、本当にリアルな世界。それをそのまま作品にしている、実体験を描いている感じですね。私の作品に出てくる詩も夢の中からふっと出てきたものです。旅行先で素晴らしい風景を観たり、お芝居や読書も好きなので、それらからもいい影響を受けていると思います。

 

ご自身の今後の目標は?

風鈴丸さん-画像

現在も少しずつ行っていますが、木版画を通して社会貢献、特に子供達のためになりたいと思っています。ワークショップでは、小さい子供にも彫刻刀の使い方を教えます。30分も経つと、みんなちゃんと使えるようになるんですよね。小さい頃から自由に体験をさせる、私はそれが教育だと思っています。あと自分の作品をアニメーションで動きのあるものにしたいし、去年念願だった絵本ができたので、それをシリーズ化したい。そんな目標もあります。

 

 

「ならいごと.jp」読者へのメッセージ

実は私も、習い事が好きで乗馬やカルチャースクールに通ったりします。好きなこと、興味のあることを習う喜びや情熱あれば、人生はもっと充実します。だから興味のある習い事を見つけていろいろ体験してみてください。あと、いい教室と出会えるかどうかで大きく変わると思います。出し惜しみをしない、本質から教えてくれる教室なら、限られた時間の中での充実度が、全然違いますからね。

 

自身にとって「木版画」とは?

風鈴丸さん-画像

生活の一部なのは当然ですが、伝統職人への感謝の気持ちを教えてくれた恩人でしょうか。伝統木版画の世界は、芸術の中でも特に職人気質が強いというか、作家は職人への敬意や尊敬が強いと思います。それは彫刻刀や砥石、バレンなど一つ一つの道具が、作品作りにも大きく影響するからでしょう。素晴らしい道具をどんな思いで丹念に作ってくれているか、使っていると感じられるんです。だから常に感謝の気持ちを忘れず、私もすべての作業が真剣勝負って感じです。

 

 

 

PROFILE

風鈴丸 ふうりんまる
静岡市生まれ。武蔵野美術大学工芸工業デザイン科卒業。1993年より長崎を皮切りに東京・静岡など、全国で個展を開く。主な展覧会BunkamuraGallery、平野美術館、新宿伊勢丹…など多数。榛原郡吉田町健康福祉センターに木彫壁画制作、昨年は初の絵本も出版。近年は木版画にとどまらず、油彩やガラス絵、樹脂人形を制作し、活動の幅を広げている。木版画家である牧野宗則氏を父に持つ。


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