vol.12 フラワーアーティスト 村松文彦(むらまつ ふみひこ)


「花は、世界の共通言語なんです。」
言葉が届かない相手にさえ、花はその純粋な気持ちを、
五感を経由して心の中心へストレートに伝えてくれる。
そんな花の前ではどんな美しい修飾語も色褪せてしまうだろう。
今回、そんな花のチカラに魅せられ続けてきた、
スペシャリスト村松文彦さんの心に芽生えた花への思いを語ってもらいました。

 

 

初めて花のチカラを感じたのは?

村松文彦さん-画像

もともとは高校、大学と絵画の勉強をしていて、大学時代は絵を描きながら世界中を歩き回っていました。アメリカの語学スクールに通っていた時、クラスに可愛らしいメキシコ人女性がいて、私の友人のアラブ人男性が花を贈ったんです。英語がそれほど話せないから、ただ花を贈るだけ。そうしたら次の日からもう二人の距離が縮まって、半年後にゴールイン。花一つで、女性の心に彼の純粋な気持ちが伝わったんですよね。そのとき単純に「花のチカラってすごい!!」って思いました。

 

 

フラワーアーティストを目指すきっかけは?

サンフランシスコの花屋で働いていた時、アメリカ最大のフラワーコンテスト、アメリカンズカップを見る機会があって。そのコンテストに大きなカルチャーショックを受けたんです。当時、日本で花といったら冠婚葬祭用か生け花用ぐらい。そんな日本人感覚でいた私にとって、花による空間デザインを見るのも初めてだし、全米各地から数多くのアーティストが結集する大きなコンテストがあるなんて。その時すぐに、「自分もこの舞台に立ちたい!」と思いましたね。

 

村松文彦さん-画像

海外でいろいろな賞を受賞していますが。

ヨーロッパ、アメリカのアーティストのマネじゃダメで、日本人だからこそ日本の素晴らしい文化を取り入れたオリジナリティ溢れるデザインをしなければと思い、草月流などの生け花の勉強をしました。日本の文化“生け花”を融合させたフラワーデザインです。当時はそれが非常に斬新で革新的だったんでしょう。もちろん、海外の優秀なアーティストの作品なども、わざわざ足を運んで沢山見て勉強しましたよ。

 

 

花の捉え方に日本人と外国人の違いを感じますか?

日本人は、亡くなられた方に花を捧げる気持ちは強いと思います。鹿児島県では毎週のように花を持って墓参りをするらしいです。一方、海外ではバレンタインデーや母の日など、人と人との気持ちのつながりに花を使うことが多いですね。日本でも最近増えていますが、もっとそういうカタチで日常的に花をプレゼントしてほしいと思っています。実は現在、花普及センターという組織で、男性から女性へ花をプレゼントしようなんて活動もしてるんですよ。

 

花の持つ魅力とは?

村松文彦さん-画像

理屈抜きに、花があるだけで幸せな気持ちになりますよね。五感で楽しめて、季節も感じられる。植えて大きくなった時に喜びを感じられることは子供にとっても大切なことでしょう。ほぼ一年中雪に覆われているノルウェーのレイバールという街は、雪のない数か月間は街中が花いっぱい。花の大切さをみんな感じているのでしょう。あるご家庭にお邪魔した時、キレイな花のアレンジメントがあって、尋ねてみると孫が作ったんだと、おばあちゃんが誇らしげに教えてくれました。純粋ですよね。

 

 

これからの目標は?

花の楽しさや素晴らしさを、もっと多くの人に伝えることです。今「花育」というのがあるのですが、その一環として多くの小中学校へ行って、子供たちの前で話をしています。世の中には様々な職業があり、技術を持った職人がいることを早い段階で知ってもらいたい。そして、将来の夢を見つけ、それに向かって努力する大切さを伝えたいのです。そのためにも、誰でもいろいろな夢を実現できるチャンスのある社会になればと思っています。

 

村松さんにとって花とは?

村松文彦さん-画像

花はいつでもチカラをくれます。疲れているとき、風邪をひいているときでも花を活けると元気になれる。あと、私がいろいろな人と出会えるのも、やっぱり花のチカラでしょう。花は人と人との心をつなげるチカラがあります。そして、世界中を歩いて感じたことなんですけど、花は言葉を要らない共通言語。音楽や絵画と同じです。花によって人の心が一瞬にして変わる。だから花のチカラによってアジアが世界が一つになればいいと思っています。花があればできると私は信じています。

 

 

 

PROFILE

村松文彦 むらまつふみひこ
1951年静岡県生まれ。
'74年アメリカンフローラルアートスクール卒業。
'89年第7回インターフローラ・ワールドカップチャンピオンを始め、数々のタイトルを獲得。
'98年冬季長野五輪表彰式用ブーケデザイン、'08、'09年漆職人の匠の技を結集した漆製品ブランド「REALJAPAN」での漆の花器デザインにも参加。
パリ ジョルジュサンク・フォーシーズンズホテルなど各国で作品を展示発表など、花を通じて世界をつなぐ夢を目指し活動中。

 


村松文彦ホームページ:http://www.muramatsu.ne.jp/

フローラルデコ東京ブランチ:http://www.hanadesign.co/

REALJAPAN:http://www.hanadesign.co/