vol.08 創作和太鼓集団 鬼太鼓座(おんでこざ)


日本屈指の和太鼓集団「鬼太鼓座」には、走ることと音楽とは一体であり、
それは人生のドラマとエネルギーの反映という「走楽論」がある。
あの独創的な音楽性は、独走的なトレーニングから生まれているようだ。
そこで、富士市での合宿生活で若き座員を束ねる同座の吉田敬洋氏に、
まっすぐ打ち込むための極意を聞いた。
ならいごとの扉を「叩く」ときのアドバイスが、言葉の中に。

 

 

合宿では主にどんなトレーニングを?

鬼太鼓座のトレーニングは、とにかく走るのが一番なんです。これは、創設者の田がはじめたもので、伝統的に引き継いでいます。

 

何故、走るのでしょうか?

何故走るのか?それについて田が話し出したら終わらなくなる程の大きなテーマなんですが。そうですね、例えば、海外公演を1ヶ月もやると、食事がおいしいこともあって、太鼓打って、食べて、寝ての生活が続きます。そうすると筋肉がモコモコついてしまう。それを走ることで、太鼓奏者として我々が理想とする体型を維持しているという部分があります。
プロレスとボクシングで例えたら鬼太鼓座はボクシングなんです。プロレスは身体もグワッと大きくして、筋書きもちゃんとあって、ショーとしての考え方が強いけど、ボクシングは身体を削ぎ落として、極限の状態で戦う。我々もそれに近くて、走って走って極限まで追い込むことで、研ぎ澄まされた人間が太鼓を叩くことができる。実際、我々のように太鼓を打つために走る人なんて聞いたことないし、走る必要なんてないのかも知れない。でも、走らない人が叩く太鼓と我々の太鼓とは、やはり違うんです。

 

座員の育成にあたって大切なこととは?

鬼太鼓座-画像

研修生が合宿生活の中で、それぞれの目標を持つことがとても大切です。走ることが毎日の中で、自分より速い先輩に追い付きたい、抜かしたい!っていう気持ちになれるかどうか。我々がそうさせるんじゃなくて、本人がその気持ちを持てるかどうか。鬼太鼓座は「来る者拒まず、去る者追わず」なので、極端な話目標が持てないとやっぱり辞めてしまう。走る事自体は制限時間を決めるわけではないし、走れない人はいないと思います。しかし、ここでの生活ではそれを毎日ひたすら続けていくわけですから、自分の目標を決めてやっていかないと難しいですね。

 

 

 

鬼太鼓座-画像

目標を持った座員に何かを感じますか?

何かが変わったのは見ていて判りますよ。だって今まで後ろを走っていた人がある日、いつも前を走っていた人を抜かして行くんですから。身体つきさえ変わってきますね。限られた自分の時間をどう利用するかでも大きく違います。走った後、「ああ疲れた~、コンビニ行こ」って先輩が楽してる間に、筋トレできるかが成長するポイントですね。

 

 

ひとつの団体で生活し、ひとつの活動を行うことの魅力とは?

外の生活に比べてもやりたいことをできる時間は少ないですし、雑多な事を考えることすら少なくなります。いろいろと制約された生活の中で、ひたすら自分と向き合って行くわけですから…。格好つけた言い方になってしまいますが、一番「シンプル」な生き方を得られることでしょうか。これはもう「美学」の世界だと言ってしまっても良いのかも知れませんね。

 

 

ならいごとで何かを始めたい、
追求してみたい人へメッセージを

鬼太鼓座-画像

ここの若者たちが入団してきたきっかけは、皆それぞれです。彼らがそれぞれの目標を持ち続けることができれば、人間としての成長をこれからの人生に活かすことができる。それは、シンプルに生活したから得られる財産みたいなものです。やはり習い事でも、シンプルに何かを追求する時間を得られる素晴らしさがあると思います。スキルアップはもちろん、人間としての成長というか、さらにその後の自分を楽しみに、皆さん自身の尺度で目標を立てて習い事の時間を過ごしたら、かけがえの無い時間になるはずです。

 

 

 

PROFILE

鬼太鼓座 おんでこざ
1969年、故・田耕(でん・たがやす)代表の構想のもとに集まった若者達により新潟県佐渡で結成。1975年、アメリカのボストンマラソン完走後、そのまま舞台に駆け登り、大太鼓を演奏するという衝撃的なデビューを飾る。その後、中国、台湾、クロアチア、イタリア、スイス、ドイツと演奏ツアーを積極的に展開。2009年には彼らの活動を収めた伝説的ドキュメンタリー映画「ざ・鬼太鼓座」(1981年制作・加藤泰監督)が再注目された他、「天皇陛下御即位二十年をお祝いする国民祭典」にて佐藤しのぶ、EXILEらと共に出演を果たす。


鬼太鼓座オフィシャルホームページ http://www.ondekoza.com/