vol.06 ジュエリーデザイナー 植松幹雄(うえまつ みきお)


富士の溶岩石、無国籍な家具や小物が違和感なく共存する空間に、
ナチュラルな存在感を放つジュエリーたちが温かく輝く。
「先の世代まで受け継がれるものを創っている」
ジュエリーデザインの魅力をそう話す植松氏は、独学でジュエリーデザインをはじめ自らを輝かせている。
フリーで、スイングして、アドリブが得意なデザインは、氏の愛するジャズの極意に近い。
磨けば光る原石の皆さんに向けてのキーワードは「インスピレーション」。
ひらめきで才能がきらめくという。

 

 

ジュエリーデザインは独学とか。そのきっかけは?

宝飾品メーカーで企画として勤めた後、三島でジャズ喫茶をはじめたのが29歳の時。つづいてファッションもすごく好きだったので、今でいうセレクトショップを沼津ではじめました。ショップでは、当然アクセサリーも取扱っていましたが、国内のファインジュエリーは高いし、提案したいファッションに合うものがありませんでした。それなら、自分でつくってしまえと…。
ちょうどその頃、コム・デ・ギャルソンのランウェイショーなんかを手掛けていた造形作家の方とのご縁があり、造形デザインを教わるようになりました。これをきっかけに、40歳のとき独学でジュエリーデザインの勉強を始めたんです。デザインソースは宝飾雑誌ではなく、モードとかのファッション雑誌で、その方がインスピレーションを得られました。要するに「宝飾屋さん」で売っている「宝飾品」は、ジュエリーとしての資産価値だとか、希少価値が優先されていて、洋服に合わせるという発想が後回しにされている。当然浮いちゃうわけですよね。だから、気軽に服に合わせられて、いつでもデイリーに付けられるジュエリーを創りたいと思いました。
そして、始めてから6年ぐらいのときに作品をBIGIに売り込み、断られながらも作品だけでもと見せたら「おもしろいじゃない!」って話に。それが全国展開のきっかけとなりました。

 

現在では全国のセレクトショップに広がっています

植松幹雄氏-画像

自分でセレクトショップをやっていたことで、良い方向につながっていきました。「JilSander」を初めて日本に持ってきたという名古屋のあるショップを足掛かりに、全国的に広まりました。私たちのデザインは実はファッションコーディネーターの方たちにとても人気があり、「アッシュ・ペー・フランス」青山店のスタッフが4人も付けてくれて、結婚指輪のオーダーも多いですね。
今後もセレクトショップとのコラボアイテムを柱として続けていきます。それと海外展開。ロンドンでいい感じの店があり、そこと今話を進めているところです。

 

 

 

植松幹雄氏-画像

植松流デザインの方法とは?

デザイン画はほとんど描きません。ブロックワックス(蝋の塊)を使い、いきなり削りだします。実際の石を見て、そこから浮かぶインスピレーションがデザインです。人の使わない石が好きで、その石そのものをインスピレーションの源にします。キラキラ輝く石にはあまり興味がありません。それよりも、なんとも表現しがたい色の石。例えばダイヤっていうとせいぜいホワイト、ピンクですよね。でも本当はそうじゃなくて、斑(まだら)のようにあらゆる色がある。僕たちは勝手に『アースカラー・ダイヤモンド』と名付けていますが(笑)。そんな石に興味をそそられます。一つひとつそれぞれに違う魅力があるから、全く同じものを創れるはずがないんです。創る工程にアドリブと偶然が重なって、二つとないものが生まれます。それは僕の好きなJazzとつながっています。

 

 

 

これからジュエリーデザイン、手工芸を始めてみたい人へ、アドバイスを。

植松幹雄氏-画像

ビジネスとしている僕の場合は別ですが、皆さんの場合は上手くできなくてもいいから、とにかく面白いものを創ればいいと思います。買い手を意識する必要がありませんから、その人の気持ちのたけを表現することです。自分が納得できるものができれば、一番すばらしい。Larouxをスタートして、僕が初めてジュエリーを創り上げたときと同じ感動が、きっと得られますよ。

 

 

 

PROFILE

植松幹雄 うえまつみきお
1976年、沼津にてインポートセレクトショップ「Laroux」を立ち上げる。その後、自らジュエリーデザインを始め、94年にはBIGIグループ「オピュスK20」シリーズにて全国展開し好評を得る。97年、アトリエ・ショールーム「Laroux」を富士市に、2007年にはフラッグシップ店舗・南青山表参道店をオープンする。現在は全国のセレクトショップにて個展も開催している。

 

La roux(ラ・ルー)
「モードに似合うジュエリー」を目指し、植松氏が1988年に設立したオリジナルジュエリーブランド。ラフダイヤやさまざまな天然石に合う美しさを生かしたオーガニックなデザインが特徴。日本のインディペンデントなファインジュエリーとして注目を集めている。


お問い合わせ:La roux アトリエ・ショールーム
http://www.la-roux.com/