vol.01 国風華道会・煎茶道静風流 (財)彰風会文化財団 海野俊堂(うんの しゅうどう)


茶道には、抹茶道と煎茶道があるのをご存じでしょうか。
今回は、格式や奥ゆかしさなど、初心者には少々敷居の高いイメージのある抹茶道に対し、「客に作法は求めない」煎茶道に注目。
「まず楽しむこと」という[静風流]家元の海野俊彦氏にお話をうかがいました。
いわゆる家元のイメージとは違った気さくでラフな受け答えからは、茶道がぐっと身近に感じられます。
肩の凝らない煎茶道、一服いかがですか。

 

 

茶道を始めたきっかけは?

不思議な縁でしたね。妻の家業がお花とお茶の家元で、結婚を縁にこの世界に入りました。元々大学でデザインを学んでいたこともあり、伝統を守りながらも「創造する」部分に惹かれました。道具の取り合わせとかでも自分の趣味、個性がだせますし、そういう意味では楽しくて、気づいたら24年間続けているというわけです。

 

 

家元の煎茶道と「お茶を点てる」抹茶道の違いは?

お茶の葉が、粉か葉の違いだと思っている人が多い。それだけではなくて、実は生い立ちが違うんですね。抹茶が日本独自の文化として確立されてから200年くらい後に煎茶が盛んになる。中国の文化として伝わったのですが、当時この新しい飲み方に進取気性の新しもの好き、池大雅とか、頼山陽とかが飛びついた。
作法に厳格な抹茶道に対し、煎茶道は「客に作法は求めない」という基本的な考え方があり、お客さんが礼儀を知らなくても恥をかくことはありません。ですから、お抹茶と煎茶はただお茶が違うだけではなく、煎茶はもっと自由に楽しみながら新しい物をどんどん取り入れていくものなんですね。
お茶を飲むのを口実に人が集まって、道具や自分の事や季節や時代の話をするのがお茶会であり、お茶の文化。手前ばかりに追われているとその楽しさが伝わらずに終わってしまうものですから、なるべくそうではないところを伝えたい。



海野俊堂氏-画像

煎茶の中でも、家元の「静風流」の違いは?

お抹茶と煎茶それほど区別つけずにやっている人もいますが、僕はやっぱり煎茶本来の考え方で静風流をのばしつづけていきたいですね。お客さんに難しい作法は求めないし、やる人も楽しくやってもらいたい。だから、お稽古ではただお茶を飲み、お菓子を食べるだけではなくて、いろんな会話をすることで勉強になる。楽しんで学ぶ、それが静風流の魅力です。

 

 

浜名湖花博でも日中交流華展を開催される等、国際的に活動されています

毎年、日本文化を海外で紹介する交流イベント「ジャパンウィーク」に参加していて、先月はオーストリアのグラーツでお茶会をやりました。お茶に関しては、海外の人も今の日本の若い人と大差ないというか、「お茶はしきたりが厳しいのでは」など同じような質問をしてきます。すごく興味をもってくれて、毎回満員で関心の高さを感じています。

 


国内での今後の活動は?

茶道の中に煎茶があることすら認知度が低い。もっと敷居を低く垣根を取り払って、一般の人も入りやすくしたいですね。行儀作法から入ろうとすると、生徒さんは嫌だし、面白くない。ただ、お茶をやると結果として行儀作法がついてきます。お茶を楽しんでいたら、なんとなく身振りに習慣がついていたというのがベスト。それを、型から入りなさいっていうと「あ~、お茶はめんどくさいな」となってしまう。
とにかく、こういう世界があることを知ってほしい。日常にあるお茶、しかもお抹茶ではなくて、普段飲むお茶が文化に変わる面白さを伝えたいですね。



これから茶道をはじめようと思っている人にメッセージを

海野俊堂氏-画像

今の人たちは、かけた費用に対してすぐ結果を求める傾向があります。こういう世界は時間もお金もかかるかもしれませんが、長くやっているからだんだん上手くなるのではなく、ある段階で突然目覚めるものです。
でも、みんなそこまでたどり着く前に辞めてしまう。お茶の煎れ方を習ったとか、多少の知識をもっても、それは目先のことでしかありません。上手い下手や、きれいな所作を身につけるには年数がかかり、逆にそれが面白さでもある。人のつながりを大事にして、急いで結果を求めないというのが大事だと思います。

 


 

PROFILE

海野俊堂 うんのしゅんどう
(財)彰風会文化財団 国風華道会・静風流 家元。第2代家元海野彰堂氏に師事し、1985年に第3代家元を継承。静岡市芸術文化奨励賞をはじめ、各賞を受賞。